|
オリジナルと二次創作を揃えております。拙い文章ですがよろしく(^_^)!
|
|
|
|
探偵と迷い |
|
|
|
10
タルトセルに捜査の手が入ったのが二日前、前日には、全ての親会社に捜査の手が伸びた。
この早期家宅捜索、逮捕者が出たのは、異例のことである。
付け加えるなら、タルトセルと大元の暴力団について、関係者全員があっさりと逮捕できたこと、その現場が報道された際、全員が一様に顔のみならず、体をも隠すように連行されていたこと。
その詳細は報道されてはいないが、ひとまずの解決、と言った所である。
そして、被害者とされた勝彦は……。
「何故、襲われる羽目になったのか、分からないと」
「あぁ」
一〇月一九日から断続的に聴取されるが、終始このような聴取で、三日経ったのもの進展していない。
一〇月二二日、月曜日の昼下がり。
「ふぅ。っだよ。寄って集って……。
……悦子……」
警察署を出ると、悦子が待っていた。
少々罰が悪そうにしながらも、悦子に近付いて行く。
「……勝彦」
「迷惑、掛けたな」
「ううん。勝彦が、無事で良かった。
で、迷惑掛けたのは、私だけじゃないんだけど?」
「……あぁ。それはそうだけど……。
あ、明日。明日で良いじゃん」
引きつる勝彦。
やっと、警察から解放されたのにと。
「だめよ。
警察の方、今日は簡単に済んだんだから、行くわよ」
確かに、助けた公一は、かなり安堵していたのは言うまでもなかった。
それが、勝彦にも伝わっていたのであろう。
しかし、勝彦の中では、それはそれ、なのである。
「勝彦。
やっぱ、いわないとだめ、か。
今日、早く終わったの、古屋さんのお陰なんだよ?」
「は?
なんだ、それ」
「さぁ、詳しくは聞いてないけど。
それと、もう一つ。
勝彦は、古屋さん預かりだって」
──なんだ、預かりって? 俺は動物か?
そう考えている間に、バスに乗せられていた勝彦である。
*
「……と言うのが、調査依頼の概要です」
勝彦、悦子が、古屋探偵事務所を訪れ、公一、由紀子を交え、誠が、かいつまんで事の説明を終えたところである。
しばし沈黙が訪れたが、勝彦が口を開く。
「……悦子」
「何?」
「お前、何で、違うって思ったんだ?」
「何で、って言われてもねぇ。
女の感、てやつかなぁ」
「あのなぁ」
「あら。女の感を馬鹿にしちゃ行けないわよ」
あらぬ方向から、悦子の援護射撃が来る。
何か言おうとした勝彦は、口を閉ざす。
「……まぁ、その話しは、後でしよう。
さて、小川君。
……バイト中に、タルトセルで、何か無かったかな」
「……どこもかしこも、はぁ。
警察でも聞かれたけど、何かって何だか分かんないから、無いって答えといた」
「小川君。何もなくて、バイトを辞めた後、店長が自宅に来るか?
挙げ句に、追い回されたんだぞ、何かあるだろう」
「無いって言ってんだろ!」
「何だ、その言い草は!」
「梅田、そこまでだ。小川君も。
それじゃぁ、店長でも、バイト仲間でも良い、喧嘩や揉め事はなかったか?」
「喧嘩? あぁ、それなら、店長とした。
五月蠅くなってきたから、バイトを辞めた」
「喧嘩の理由は?」
「……随分前だったかな?
名作って言われてるビデオが入庫して、搬入中にパッキングを破損した」
「随分前とは、どれくらい前かな?」
「う〜ん。正確な日付は忘れたけど、七月、かな?」
「今年なのか?」
「当たり前じゃん。
いつの七月だと思ってるんだよ」
「三ヶ月前……。それが随分前なのか」
「何だよ。随分前だろう?」
公一が、更に食って掛かろうとするのを、誠は手で制し、公一が止めたのを確認してから……。
「……それで、小川君。
そのビデオの中身は、確認したのか?」
「あぁ、見たよ。
でもさぁ、中にモデルガンが入ってたんだよ。
店長も何考えてるんだか」
「そうか、で、それは封をして戻したのか?」
「あ、あれは、ちょっと面白そうだったんで、持ち帰った」
「ふむ。店長の許可は貰ったのか?」
「え? 何で?
店長の物じゃないでしょ? それに、数が一杯あるんだから、一つくらい良いじゃない」
「か・つ・ひ・こぉ〜。
だめに決まってるでしょ!」
悦子の体が震えている。
どうやら、今までの会話中、ずっと耐えていたようである。
勝彦は、突然の出来事に、悦子を凝視したまま止まっていた。
「人の物を取るのは犯罪だって、お母さんやお父さんに教わったでしょう」
「……ひ、人の物じゃない、そ、それに、一つくらい問題ないだろ?」
悦子は、ギロリと勝彦を睨み付ける。
体が、わなわなと震えている。
今にも爆発しそうであった。
「佐々木さん。
話を進めましょう。後でしっかり叱ってあげなさい」
「分かりました」
その声が、怒りに満ちていたのは言うまでもない。
誠は、この若者に対して、どう接した物かと思案した後。
「では。盗んでいないとなると、どうなるのかな?」
「は?
借りたに決まってるじゃん」
その回答に、悦子を含めた全員が頭を抱えたのは言うまでもない。
その状況に、”何?”と言った表情を浮かべる勝彦。
気を取り直した誠が。
「……それじゃぁ、その借りた、モデルガンらしきモノは、今どこにある?」
「え、え〜。スポーツバッグの中だ。
……あっ。思い出した、あれ、悦子に預けたままじゃん」
「な、な、なんですってぇ〜」
その後、悦子の怒りが言葉になって、マシンガンの如く勝彦に放たれた。
一〇分程も続き、由紀子が何とか宥め賺して、治まることとなる。
「さて。
その、モデルガンらしきモノを、預かりたいんだが?」
「だめに決まってるだろ?
あれは俺のだ……」
「……か・つ・ひ・こ。
借りたって言ったじゃない、何で、あなたの物なのよ。
それに、危険かも知れない物を、恋人の私に、預けっぱなしにするなんて。
罰として、古屋さんに預けなさいね」
「何だよ、それ。やだね」
「勝彦……」
再び隣の悦子から、鋭い視線と小言が勝彦に降り注ぐ。
結局、罰と言うのが殺し文句になったのか、勝彦としては渋々、と言ったところであろうが、誠に預けることとなった。
*
翌日の昼過ぎ。
誠が出て来たのは、町田警察署。
情報提供のための書類を出し終えたところである。
便宜上預かったことにした、モデルガンらしきモノ。
誠の見立てでも、先ず間違いなく、本物である。
タルトセルは、いや、親である暴力団は、ビデオを使って密輸していたことになる。
いくつもの会社を経由し、タルトセルでしばらく保管した後、何処かへ売られる筈だったのであろう。
──ま。良いことばかりではないものの、世間、と呼ばれる場所に、出てきて良かったな。
しみじみそう思う誠であった。
勝彦の処遇については、窃盗罪に当たりはするものの、今回、一連の逮捕のきっかけを作った功績にもなり、裁判になったとしても情状酌量になるだろうとのことである。
幾人もの人が、幾通りもの考えで行動している。
幾人もの人が、幾通りもの生き方をしている。
少々、若者達の先行きに不安がない、とは言わないが、それもまた一つの生き方であろうし、気が付けば修正は幾らでも出来る。
そんな世の中が、また一つ好きになった誠である。
〜完〜
|
|
縦書きで執筆しているため、漢数字を使用しておりますことご理解ください。
|
|
下記、名称をクリックすると詳細を展開します。
|
|
おがわ かつひこ |
小川 勝彦
西暦1980年 9月10日生まれ。身長/体重:178㎝/60㎏
学年:社会学部 3回生
小川勝也家長男として生まれる。
本質的には優しいのだが、その反発として、ムラが多く、喜怒哀楽を激しく表現しすぎる。その為、周りの人を困らせることが多々ある。
嫌いなものは肉類。好物は、焼き魚。
|
|
ささき えつこ |
佐々木 悦子
西暦1980年 8月 8日生まれ。身長/体重:160㎝/45㎏/スリーサイズは未定
学年:社会学部 3回生
佐々木玲児家次女として生まれる。
気性の激しい、とまではいかない荒さがある反面、優しさもある。また、いわるゆ面倒見の良いところを持っている。
嫌いなものは焼き魚関係、だが、好物は、刺身。
|
|
ふるや まこと |
古屋 誠
西暦1966年 9月 6日生まれ。身長/体重:175㎝/65㎏
職業:私立探偵。古屋探偵事務所所長兼探偵長
古屋本家次男として生まれる。
それ故か、何事にもマイペースでこなしていく、喜怒哀楽がないわけではないが、怒りについては本来有する性格のためか、激怒したことは今までにない。
食べ物で好き嫌いはないが、特に好物なのは、カリカリベーコンの目玉焼きである。
|
|
せりざわ ゆきこ |
芹沢 由紀子
西暦1970年 7月19日生まれ。身長/体重:168㎝/50㎏/スリーサイズ未定
職業:私立探偵。古屋探偵事務所事務
芹沢家長女として生まれる。
おっとりした方であるが、活発さも持っている。ごく普通の女性である。
細かいことに気が付くことが多い。
嫌いなものは納豆である。
|
|
うめだ こういち |
梅田 公一
西暦1971年 7月 1日生まれ。身長/体重:170㎝/66㎏
職業:私立探偵。古屋探偵事務所探偵
梅田家次男として生まれる。
ありがちな次男の性格である、自分勝手さが時折顔をのぞかせる。が、新米の頃に、自分勝手な性格が前面に出たために、仕事は失敗、当時の探偵長を始め所長にまで迷惑をかけた経緯があり、その性格が出ていないか自己分析した上で行動できるように訓練をし、今では、殆どのところを制御している。
好き嫌いはないものの、やはり一番の好物は、母の手料理である。が、難点は、ビール好きであること、ビールであれば底なしのように飲む。
|
|
「タルトセル」 店長
職業:「タルトセル」 店長
店長として表に出ることが多々あるため、表裏を使い分けできる人物のようである。
|
|
ふるやたんていじむしょ |
古屋探偵事務所
事務所は、東京都町田市忠生の外れ、多摩市に近い方にある。
事務員と探偵と探偵長の3人だけの事務所である。そう大掛かりの必要もなく、店舗使用可のマンション形式のアパートである。
|
|
町田市
東京都の多摩南部に位置付けられている南にせり出した一体で、神奈川県に隣接した市。
作品年代においても、駅周辺はかなり発展している。
しかし、駅を離れると田園風景が広がっている。
|
|
|
Copyright(C) 2002,2009 木眞井啓明