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オリジナルと二次創作を揃えております。拙い文章ですがよろしく(^_^)!
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探偵と迷い |
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6
呼び鈴が鳴らされる。
平日とは言え、早い時間、九:〇〇を少し回った頃。
「何だよ。誰だよ」
ぶつぶつ呟いているのは、自室にいた勝彦。
家族は全員が出払っていた。
残っていたのは、火曜日は午後からの勝彦だけである。
気怠そうにしながら階段を下りる。
生あくびを一つしながら、玄関のドアを開ける。
「……」
開けると、門の外に思いも掛けない人物がいた。
「あぁ、小川君じゃないか。ご両親はいないのかね?」
「今日は出払ってますが。何か?」
「いや、いないのなら良い。
おじゃましても良いかな?」
勝彦は、渋々玄関の中に、元バイト先の店長を招き入れる。
そこには、どこの家庭にもある、背の低い後付けの下駄箱。
その上には、仄かな香りと相まって、玄関を明るく華やかにして持て成しを演出している花が、花瓶に生けられている。
その玄関に、二人の男が対峙し、佇んでいる。
「さて、小川君。
君が盗んだモノを返してもらおうか?」
「何?
それはないと言った筈ですが?」
まだそんなこと言っているのかと。
結構しつこいな、と。
バイト中以上に、五月蠅く感じ始める。
「それは済んでますから。帰って下さい」
「ほう。手みやげなしに追い返すか」
「何ですか、それ。
分かんないんですけど」
──……店長、しつこいなぁ。
その想いは、表情にも表れている。
それに気が付いたかどうか、店長は、俯き加減になっている。
──……今度は何だよ。今更、謝っても許さないけど。
が、次の瞬間……。
「……おい、ガキ」
「?」
「舐めるのもいい加減にしとけ」
上げた店長の形相に、遂に、後ずさりを始める勝彦。
勝彦の変化を見逃さず、一歩、足を踏み出す。
──な、何だ? 何だよ……。
勝彦に、恐怖が芽生え始める。
店長が、一歩、また一歩詰め寄る分、勝彦が家の奥へと後退る。
「さっき、済んだと言ったか?
終わっちゃいねぇよ。まだな」
──……う、殺される?
脅えているからなのか、足が思うように動かせない。
そこに焦りが加わり、更に思うように足を動かせない。
店長は、ぎくしゃくとした動きが面白く映ったのか、真綿でゆるりと首を絞めるかのように迫り、勝彦は、奥へ奥へと追われていく。
「お前が、盗んだモノを返すまではな」
「だ……。
だ……」
「だ? それから?」
「だ、から、済んだ、と」
何とか言葉を絞り出したものの、まだ、恐怖が拭えた訳ではなかった。
足は小刻みに震え。
手はきつく握りしめたまま。
「ガキ相手に、ここまでしたくはなかったんだが。
ネタは挙がってるんだがな」
「ネタって、何だ?
お、俺は、知らない。
わ、分かんないこと、い、言ってんじゃ……」
「そこまで、隠すつもりなら……」
ぐいっと胸ぐらを捕まれ、睨みを更にきかされた勝彦は……。
──……殺される!
捕まれたまま暴れだす。
勝彦は、ひたすら暴れた。
殺される、その思いから、藻掻き、暴れる。
──……やだ。まだ死に、たくない……。
しばらく、藻掻き、暴れるていると、不意に、捕まれていた服が離される。
解放されたことに気が付いた勝彦は、一目散に家から飛び出す。
何も考えず、兎に角、その場から逃れるように……。
それが、自分の家からであったとしても……。
*
少々時間は遡って、勝彦の自宅に、店長が来訪した頃……。
──! ……何で今更……。直ぐにどうとか、無いだろうな。
慌てた公一は、直ぐさま、近くの公衆電話に走る。
「あ、梅田です。
小川君の家で、問題が発生しました。所長に来るように伝えて下さい」
連絡を終えた公一が、元の場所に戻ってくると……。
──……うわぁ。修羅場って奴か?
家の中から、それほど大きな声ではないが、罵声のような声が時折聞こえる。
流石に、物が壊れる音までは、聞こえてこない。
それが唯一の救いであった。
──所長。早く来てくださいよぉ。
一分が、一秒が、こんなに長く感じられるものかと。
冷や汗を流し続ける。
──こんな時は……。小川君を追うか……。う〜ん。
公一は焦り、まだ、考えなくても良いことを考え出す。
焦りすぎているだけなのかも知れない。
何れにしろ、店長の経歴が経歴である、思考がそこに行き着くのは、仕方のないことである。
十数分後……。
これと言った動きがないままの勝彦の自宅。
公一は、手を握りしめ、見続けていた。
「!」
引きつった表情のまま振り返る公一。
そこには、少々笑みを浮かべた誠の顔があった。
「……ビックリさせたか?」
「……あぁ。所長ですか……」
「ちょうど町田駅近くにいて、定時連絡で状況を聞いてな。
ま、しかし、良く間に合ったものだな……。
どんな様子だ?」
連絡の間以外で、勝彦は出てきていないこと。
店長が入ってから、時折声が聞こえること。
このまま、声が続くようだと、大事になりかねないこと。
「そうか。
我々には、この状況をどうすることも出来ない。
そうだな、……この状況だと、お前は、店長を頼む、私は……」
言いかけた時、勝彦が、家から靴を抱えて飛び出して来る。
「所長!」
「待て。しばらく、様子を見る」
店長が出てくる様子がないため、後を公一に任せて、誠が勝彦の後を追う。
──ふぅ。追い付いたか。
角を一つ曲がったところで、勝彦を確認する。
小走りで、次の角に差し掛かった時。
もの凄いタイヤのスキル音と共に、一台の車が飛び出して来る。
弾き飛ばされた誠だが、何事もないのか瞬時に立ち上がる。
飛び出してきた車を無視して、追い続けようとする。
正にその瞬間を狙ったかのように、肩を掴まれる。
振り向くと……。
──こいつ。
少々睨んだ形となるが……。
「あ、あの。
大丈夫ですか?」
「外傷も、打ち身もない。
肩の手を離して貰えないですか?」
「いえ、そう言う訳にはいきません。
仮にも、車に当たったんですよ?
どこかに怪我でもあっては、大変ですから」
執拗な態度を取る男。
──……こいつも、か。
そんな遣り取りをしていると、スキル音を聞きつけた住民が、いつの間にか野次馬になっていた。
この状況もさることながら、このままでは、どちらにしろ不味いことも分かっていた。
「仕方ありません。
これくらいやれば、問題がない事も分かるでしょう」
誠はその場で、バク転や宙返りなどをする。
野次馬は、何が行われているのかも分からずに、その様子に歓声すら上げていた。
誠は一連の動作を、運転手から離れた場所で終わらせる。
「刃物でも持っていれば、あなたは……」
「……わ、分かりました。
大丈夫な様だ。
し、失礼します」
一瞬にして背後に回った誠の囁きに、慌てふためきながら、車に戻りその場を立ち去る。
野次馬には、何が起こったのか分からない様である。
その場を、何とか納めたが……。
──……くっ!
周囲も含め探し回ったものの、とうとう見つける事は出来なかった。
勝彦を完全に見失ったのである。
*
「店長は、何処にも寄らず、手荷物もなし、か……」
勝彦が何処へ行ったのか気がかりではあったが、闇雲に探し回るのも得策ではなかった。
公一が見失った時と、状況がまったく違っていたためである。
それに、タルトセル側の動向がまったく掴めていないのである。
状況の整理も兼ねて、店長の後を追った公一を呼び戻し、誠もひとまず事務所に戻り、一通りの整理が終わったところである。
「それはそうと、古屋さん。
体の方は、本当に大丈夫なんですか?」
「あ、あぁ」
「その辺に関しては、俺は心配する必要を感じてません」
「それは、関心がないって事ですか?」
「あ。違いますよ。
武術が達人、では表現できない人らしいですから」
「はぁ」
公一の説明に、きょとんとした表情の由紀子。
誠の方は、何とも言い難い表情をしている。
確かに、偽装とは言え、相手は怪我をさせようとしていたに違いないのである。
しかし実際には打ち身はなく、傷と言えば、数カ所の擦り傷程度である。
よほど武術に優れているとしか言いようがなかったのである。
「……それはさておき、芹沢さんには、佐々木さんへの連絡をお願いします。
私と梅田は、小川君を探しに行きます。
あ、梅田、お前は小川君中心で頼む」
「分かりました。で、所長は?」
「私か? もう少し、タルトセルの方も探ってみるよ」
「……と言う訳です。申し訳ございません」
「……勝彦が……」
誠、公一が出払った後、由紀子は悦子に連絡を入れ、一通り説明し終えた所である。
悦子は、話しの半ばから心ここにあらずと言った状態なのが、電話口の由紀子に伝わっている。
それほどまでに、勝彦を気遣っている、いや、愛しているのであろう。
──……佐々木さん。そこまで……。そうね、私が、佐々木さんを支えられれば……。
「佐々木さん?」
「……は、はい」
「大丈夫です。必ず、見つけます。
今すぐに、店長達に見つかることはないでしょう」
「……」
「それから、もし、小川君から連絡がありましたら、こちらに電話を入れて下さい」
「……はい」
「もう一つ。
可能なら、隠れている場所も聞き出す様にお願いします。あなたなら、聞き出せると思うから。
それでは、失礼します」
由紀子は、受話器を置きながら、ここから正念場が始まるのかと思った。
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縦書きで執筆しているため、漢数字を使用しておりますことご理解ください。
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下記、名称をクリックすると詳細を展開します。
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おがわ かつひこ |
小川 勝彦
西暦1980年 9月10日生まれ。身長/体重:178㎝/60㎏
学年:社会学部 3回生
小川勝也家長男として生まれる。
本質的には優しいのだが、その反発として、ムラが多く、喜怒哀楽を激しく表現しすぎる。その為、周りの人を困らせることが多々ある。
嫌いなものは肉類。好物は、焼き魚。
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ささき えつこ |
佐々木 悦子
西暦1980年 8月 8日生まれ。身長/体重:160㎝/45㎏/スリーサイズは未定
学年:社会学部 3回生
佐々木玲児家次女として生まれる。
気性の激しい、とまではいかない荒さがある反面、優しさもある。また、いわるゆ面倒見の良いところを持っている。
嫌いなものは焼き魚関係、だが、好物は、刺身。
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ふるや まこと |
古屋 誠
西暦1966年 9月 6日生まれ。身長/体重:175㎝/65㎏
職業:私立探偵。古屋探偵事務所所長兼探偵長
古屋本家次男として生まれる。
それ故か、何事にもマイペースでこなしていく、喜怒哀楽がないわけではないが、怒りについては本来有する性格のためか、激怒したことは今までにない。
食べ物で好き嫌いはないが、特に好物なのは、カリカリベーコンの目玉焼きである。
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せりざわ ゆきこ |
芹沢 由紀子
西暦1970年 7月19日生まれ。身長/体重:168㎝/50㎏/スリーサイズ未定
職業:私立探偵。古屋探偵事務所事務
芹沢家長女として生まれる。
おっとりした方であるが、活発さも持っている。ごく普通の女性である。
細かいことに気が付くことが多い。
嫌いなものは納豆である。
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うめだ こういち |
梅田 公一
西暦1971年 7月 1日生まれ。身長/体重:170㎝/66㎏
職業:私立探偵。古屋探偵事務所探偵
梅田家次男として生まれる。
ありがちな次男の性格である、自分勝手さが時折顔をのぞかせる。が、新米の頃に、自分勝手な性格が前面に出たために、仕事は失敗、当時の探偵長を始め所長にまで迷惑をかけた経緯があり、その性格が出ていないか自己分析した上で行動できるように訓練をし、今では、殆どのところを制御している。
好き嫌いはないものの、やはり一番の好物は、母の手料理である。が、難点は、ビール好きであること、ビールであれば底なしのように飲む。
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「タルトセル」 店長
職業:「タルトセル」 店長
店長として表に出ることが多々あるため、表裏を使い分けできる人物のようである。
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小川家
所在地は、町田市小川。
閑静な住宅街の一角にあり、父:小川勝也、母:照美、長男:勝彦、長女:美也の4人家族である。
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佐々木家
所在地は、町田市小川。
閑静な住宅街の一角にあり、父:佐々木玲児、母:悦枝、長女:玲子、長男:悦児、次女:悦子の5人家族である。
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町田市
東京都の多摩南部に位置付けられている南にせり出した一体で、神奈川県に隣接した市。
作品年代においても、駅周辺はかなり発展している。
しかし、駅を離れると田園風景が広がっている。
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成瀬駅
町田市成瀬にある。JRの駅。
作品年代において、住宅地の駅と言ったところ。
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Copyright(C) 2002,2009 木眞井啓明