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Soly japanese only.
書き物の部屋のイメージ オリジナルと二次創作を揃えております。拙い文章ですがよろしく(^_^)!
no-imageのバナー 探偵と迷い


     2


──はぁ。とうとう来ちゃったけど、大丈夫?
 そんな想いもあるのだが、ここ一ヶ月半程、勝彦を今まで以上に見詰めた悦子。
 分かったことと言えば、バイトを辞めたこと。
 元々が、楽そうだからと始めた訳だから、何かが辛くなって止めたのであろうと。
 あのデートの日、感じた違和感……。
 それが、一向にぬぐい去れない。
 ここ数日は、単なる勘違いではないかと、悩み続けていた。
 結局、己の直感を信じることにした。
 ここは、町田駅からバスで二〇分ほどの場所。
 忠生公園に近い、マンション形式の建物の一室。
 通された部屋には、これと言った調度品や装飾品はなく、両袖の机、その向かいに、悦子が座っている応接セットが一組あり、後は、天井まであるキャビネットが二つほど壁を埋めている。
 事務所代わりと言った趣である。
 入って間もないのだが、いろいろな想いが去来し、悦子が、そわそわして落ち着かないでいると。
「失礼します」
 ノックの音と共に、女性が入ってくる。
 セミロングで、軽くウェーブの入った黒髪。
 細面の輪郭に、やや大きめの目、ちょこんと乗ったような小振りの鼻。
 身長は女性としては高い方で、悦子より高く一七〇センチに届きそうなほど。
 また、女性としての主張もしっかりしており、悦子から見れば、大人の女性と言った雰囲気を醸しだしていた。
 その女性は、はにかんだような笑みを浮かべつつ。
「お待たせして、ごめんなさいね。お茶で、良かったかしら?」
「い、いえ。
 あ、ありがとうございます」
 何故か気圧される悦子。
 それでいて、何となく引かれる女性を、いつの間にか目で追っている。
 その女性が、部屋から引き上げて行くのを眺め続けている。
「!」
 入れ替わって入ってきた男に、息を呑んだ。
 悦子の目が、落ちんばかりに見開かれている。
 威圧感ではないのだが、その量感からなのか、いや、雰囲気に圧倒されただけなのかも知れない。
 実際には、怖い顔をしている訳ではない。
 四角い顔に、やや垂れた細めの目、鼻筋の通った大きすぎない鼻。
 短めのこぎれいな頭髪。
 かっこいいとは言い難いが、それなりに品のある顔、あるいは、味のある顔付きと言ったところ。
 体格としては、背は高いが、どちらかと言えば体操選手、あるいは、スポーツをやっているように見える体格であることに気が付く。
 それほどまでに、入ってきた男が持つ存在感が大きかったのかも知れない。
「お待たせしました。
 古屋探偵事務所の所長、古屋誠です」
「……あ、はい。
 佐々木悦子と言います。よろしくおねがいします」
「それでは、ご依頼の件について、覗ってもよろしいですか?」
「はい。
 恋人である小川勝彦君についてなんですが……」
 悦子は、勝彦の言動に違和感を感じたこと、それが一月半ほど続いていること。
 一時は、勘違いとも考えたこと。
 等々を、悦子の感じたまま、見たままを説明した。
「……これで全てです。
 私が言うのも変ですが、喧嘩していないし、嫌いになってもいません。
 先ほども言いましたが、大学の友人達にも、別の女性がいないと確認しました……」
 後半は、節に訴えたせいか、涙ぐんだ声となった。
 誠は、悦子を見据えたまま、口を噤んだ。
 その表情からは、臆したようには見受けられない。
 悦子からの説明で、思考を巡らせているのであろうか。
 すると……。
「……佐々木さん、ちょっと失礼します」
 思案の末、誠はそう言って部屋を出て行く。

「どうでした?
 恋愛絡みですか?」
 誠の居住として使っている部屋に入るや否や、待ちかまえていたのであろう、先ほどの女性が質問を浴びせる。
 頷く誠。
 少々落胆したような女性。
 誠ですら、やっかいだなといった感情が、表情に表れている。
 恋愛絡みだとすれば、探偵の出番は少ないのかも知れない。
「そうですか。
 すると、やはり過剰反応ですか?」
「まぁ。そうとも言え、そうで無いとも言え、と言ったところなんだが……」
 話しながら、食卓に着いて唸り出す。
 誠は、心底迷っている、悩んでいるようだ。
「そうですか。
 古屋さんが、そう感じるのは珍しいですね」
「まぁ、そうかな。
 時に、芹沢さん」
「はい」
「……」
 正面から誠を見据える芹沢と呼ばれた女性。
 誠は、何かを言おうとして、言えないのか、止めたのか……。
 視線を芹沢から外す……。
「古屋さん。何でも言って下さい。
 正式な所員ではありませんし、私を表に出せない理由も理解しているつもりです……。
 ですが、お世話になっている以上、お役に立てればと思いますから」
 誠が告げなかった、告げるのを止めた理由がこれである。
 そうは言っても、所員が一人しかいないため、事務所を開けることが多く、また、芹沢の役に立ちたいという申し出により、アルバイト扱いで事務所の出入りを許している。
 そんな事情もあり、困り果て頭を掻く誠。
「……分かった。
 それでは、言葉に甘える、か。
 同性ならではの突っ込んだ説明を聞き出して貰いたい」
「はい」
「では、彼女の依頼内容を手短に話す……」
 数分後。
「お待たせしました。
 芹沢由紀子と申します。よろしくお願いします」
 しばらく待たされていた悦子のいる部屋に、由紀子が現れた。
 悦子は、少々面食らっていた。
 所長から別の人に、バトンタッチされたのだ。
 何故?
 そう思いながら……。
「あ、はい!
 佐々木悦子です」
「それでは、もう少し話を聞かせていただけますか?」
 由紀子は、女性ならではの視点から、悦子の感じる違和感を探り出そうと話をする。
 十数分後。
「私も聞いた限りにおいては、恋愛のいざこざではないと感じましたし、そう判断して問題はないと思います。
 只、そうすると、単なる勘違いという線も出てきます」
「そうか……」
 誠の待っていた先ほどの部屋で、由紀子が報告し、再び唸る誠。
 今回ほど、やっかいな恋愛事象は初めてであった。
 恋愛のいざこざではないと確信できるだけに、その核心部分が見えてこない。
「それと」
「まだ、何かあるのか?」
「ええ。彼女の話を聞く限りなんですが、何か、引っ掛かるのも確かなんです。
 只、彼女の今の雰囲気が、そうさせている可能性もありますが……」
 由紀子もまた、考え込んでしまう。
 考えれば考えるほど、深みに填っていくようである。
 いっそのこと、引き受けない、と言うことも考えられた。
 だが……。
「芹沢さん。
 その、引っ掛かるというのは、話の内容から?」
「……直感、と言ったら不味いですか?」
 由紀子は即答できず、少々気まずそうに喋る。
 その返答に、更に、頭を抱える誠。
 突き詰めれば詰めるほど、見えてこない事象。
 この様に、依頼を受けるか迷った時、誠は、受けることにしている。
 万が一に、何かがあっては、事が遅れることにもなりかねないからである。
 とは言え、今回の依頼が、果たして当てはまるのか、困り果てていた。
「……仕方がない」

 しばらくして入ってきた誠の険しい表情から、悦子は、依頼を断られるのだと感じた。
「……佐々木さん。ご依頼の件、承りましょう」
「そうですよね。
 こんなたわいのな……。
 ?」
「佐々木さん。依頼を受けますよ」
 悦子は、呆然としていた。
 先ず、所長が話を聞き、その後代わったのだ、一般的に考えれば、何とか断る理由を探している、適当にあしらうための方便と取れるからである。
「……あ、ありがとうございます。
 よろしくお願いします」
「分かりました。
 さて、学生さんとは言え、報酬のお話をよろしいですか?」
 満面に笑みを浮かべたまま、悦子は誠の言葉に返事をする。
縦書きで執筆しているため、漢数字を使用しておりますことご理解ください。
下記、名称をクリックすると詳細を展開します。
おがわ かつひこ
小川 勝彦
西暦1980年 9月10日生まれ。身長/体重:178㎝/60㎏
学年:社会学部 3回生

 小川勝也家長男として生まれる。
 本質的には優しいのだが、その反発として、ムラが多く、喜怒哀楽を激しく表現しすぎる。その為、周りの人を困らせることが多々ある。
 嫌いなものは肉類。好物は、焼き魚。
ささき えつこ
佐々木 悦子
西暦1980年 8月 8日生まれ。身長/体重:160㎝/45㎏/スリーサイズは未定
学年:社会学部 3回生

 佐々木玲児家次女として生まれる。
 気性の激しい、とまではいかない荒さがある反面、優しさもある。また、いわるゆ面倒見の良いところを持っている。
 嫌いなものは焼き魚関係、だが、好物は、刺身。
ふるや まこと
古屋 誠
西暦1966年 9月 6日生まれ。身長/体重:175㎝/65㎏
職業:私立探偵。古屋探偵事務所所長兼探偵長

 古屋本家次男として生まれる。
 それ故か、何事にもマイペースでこなしていく、喜怒哀楽がないわけではないが、怒りについては本来有する性格のためか、激怒したことは今までにない。
 食べ物で好き嫌いはないが、特に好物なのは、カリカリベーコンの目玉焼きである。
せりざわ ゆきこ
芹沢 由紀子
西暦1970年 7月19日生まれ。身長/体重:168㎝/50㎏/スリーサイズ未定
職業:私立探偵。古屋探偵事務所事務

 芹沢家長女として生まれる。
 おっとりした方であるが、活発さも持っている。ごく普通の女性である。
 細かいことに気が付くことが多い。
 嫌いなものは納豆である。
ふるやたんていじむしょ
古屋探偵事務所
 事務所は、東京都町田市忠生の外れ、多摩市に近い方にある。
 事務員と探偵と探偵長の3人だけの事務所である。そう大掛かりの必要もなく、店舗使用可のマンション形式のアパートである。
町田市
 東京都の多摩南部に位置付けられている南にせり出した一体で、神奈川県に隣接した市。
 作品年代においても、駅周辺はかなり発展している。
 しかし、駅を離れると田園風景が広がっている。



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