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オリジナルと二次創作を揃えております。拙い文章ですがよろしく(^_^)!
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探偵と迷い |
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8
勝彦の捜索を始めたのが九日前。
裏情報の調査依頼をしたのが五日前。
どれもが、一向に進展を見せていない。
進展した事と言えば、暴力団に動きがあると掴んだこと。
その暴力団が、集団で何かを探し回っていると思われるのを公一が目撃した。
ほんの二日前のことである。
今日の空は、誠達の気分を表したかのようにどんよりし、そこに差す茜色と相まって、不思議な色合いを醸し出している。
一〇月一一日、木曜日。
夕刻。
誠は、小田急町田駅の北側から少々離れた、車が二台擦れ違うのがやっとな道がある住宅街にいた。
散策でもしているかの様に歩いていると、背後から、殺気が放たれてくる。
──……あからさまだなぁ。何人いるんだ?
「……。!」
誠が声をかける間もなく、突然襲ってくる者達。
皆、手に手に刃物、棒状の物を持っている。
襲ってくる者達の動きに、無駄が少ない。
それなりに、実践経験があるようだ。
──まったく……。名乗りあいもなしか……。こちらの素性を知っていると言うことか。
その全てを軽くいなす誠。
何かあるのか、襲いかかってきた者達の動きが止まった。
──……う〜む。正確なのに、大降りで、勢い余る……。はて……。
明らかに、本気を出していないのが伺える。
いや、それだけではないであろう。
怪我を負わせ手を引かせる、と言った方法なのか、しかし、襲いかかった者達は、わざとなのか、前のめりになりなりがら、背後へと回っていた。
「ふむ」
誠は、回り込まれた背後に半身を向ける。
──こいつを使った方が早そうだな。
背に回した右手に、棒状の物が握られている。
特殊警棒である。
それを逆手に持ち、回り込んだ連中を正面に据える。
緊張が高まる中、突然、背後から人の倒れる音を耳にする。
──……後ろは、後回し!
足を踏み出す誠。
呼吸を合わせたかの如く、前から、右左からも襲いかかってくる。
その者達に、特殊警棒で応戦する。
金属同士のぶつかる音。
擦れる音。
時折混じる、微かな呻き声。
住宅街の喧騒には、似つかわしくない音が響き続ける。
格闘が終わると、襲いかかってきた者達が転がっていた。
誠は、後回しにした方に目を向ける。
──? ほう、綺麗におねんねしてるじゃないか。
それを目の当たりにした誠は、頭を掻いた。
「……こちらのは苦しんでいる、か、ショックが弱かったのか?」
「流石ですね」
「……まったく、人が悪ですよ。
せめて、任せろ、と言ってもらいたいんですが」
「すいません。
本来は手を出す予定はなかったんですが、たまたま、近くに来ていたお節介なのが、いきなり手を出してしまいまして、告げる暇がなかったんですよ」
そうは言っても、当の人物は見あたらない。
誠は少々疑問を感じたが、仮に、この男がやったとて不思議だと思っていない。
満面の笑み、とは言いがたいが、微笑んでいるこの男も、一癖あるのは先刻承知である。
「……しかし、良く、ここにいるのが分かりましたね」
「……感、とでも思って下さい」
「感、ですか」
「はい」
「……ま、片付いたんで、良いですが」
「さて、今日の用事は、依頼された調査の報告と、これを……。
それと、お節介ついでにもう一つ……。
やっかいなことに、首を突っ込んだようですよ」
「やっかいなこと……」
渡された報告は、メモ紙ではなく、本格的な報告書の束であった。
メモ紙ではない分、やっかいなことと言ったのが、伊達ではないのだろうと伺える。
「これは?」
もう一つの袋、掌の感触で丸い物が幾つか入ってるのが分かる。
「光玉と言います。
いつも、申し訳ないんですが、またちょっと実験を……」
「また、ですか。
実験をするのは構わないんですが、今回使えるか分かりませんよ」
「いつでも」
誠は、会話をしながら、報告書の中身をざっと読む。
「これは……」
誠の表情が硬くなる。
「裏も取りましたから、事実です」
「裏で、こんな……。
すいません。急ぎます」
「はい。その方が良いでしょう。
では」
*
翌々日。
公一は、着慣れない服装に身を包み、バイクを駆っていた。
──まったく。何でまた、こんな事に……。……しょうがないのかな?
所員が少ないとは言え、大型までのバイクが乗れるとは言え、誠の人使いの荒さが身にしみていた。
それは、一昨日の晩……。
「……あぁ、済まない。
ネタは、ちゃんと食べさせるから、頼む……」
定時連絡で呼び戻された公一が、事務所に入ると、誠が電話をしているところであった。
「良しと。
梅田、ちょうど良い。今から町田警察の布施刑事に会いに行ってくれ」
「またですか?」
「頼むぞ。
それから、参考資料としてこいつを渡してくれ。お前も読んでおけよ」
否応なく警察署に赴くことになり、今に至っている。
着慣れない服装、乗り慣れない白バイ。
少々苦労しながら、勝彦の捜索を、本職とペアで行っている。
──小川君。何処にいる。
公一は、未だに見つからない勝彦を捜している。
町田市小川。
整備された住宅街であり、所々に公園も作られている。
所々に植木が茂っていたり、公衆のお手洗いもある。
隠れるにはもってこいではあるが、探す方にとっても探しやすいところである。
だが、流石にいない。
そんな中、ある市道を横切ろうとした時……。
──あの後ろ姿は……。ここまで、手を伸ばしているのか。
公一の白バイが止まっていることに気が付いた本職が戻って来る。
「急がないと、不味いですね」
「そうですね」
二人は、アクセルを開け、その場を去っていく。
一方の誠は……。
町田駅の北西側、先日襲撃にあった辺りから、北方向に捜索を行っていた。
──先日の、あの襲撃は、単なる偶然か……。俺を襲うために、来ただけなのか……。
判然としない状況。
後手とはなったが、誠の方も警察の手を借り、手数は増やした。
これからは、どちらが先に勝彦を発見するかになる。
「プルルルル。
プルルルル。
プ……。
はい。古屋探偵事務所です」
「古屋です」
「あ、古屋さん。
ちょっと待って下さい。
梅田さんから、町田市小川周辺で、例の集団を見たとのことです。
それから、佐々木さんから電話がありましたが、居場所までは聞き出せなかったそうです」
「町田市小川の方に、手が行っているのか。
その方面とふんだのか、手がかりを掴んだのか……」
「古屋さん。焦ってはいけません」
「あぁ、分かっている。済まないが、引き続き留守を頼む」
「はい」
──さて、と。どうしたものか。
誠は、電話ボックスを後にする。
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縦書きで執筆しているため、漢数字を使用しておりますことご理解ください。
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下記、名称をクリックすると詳細を展開します。
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おがわ かつひこ |
小川 勝彦
西暦1980年 9月10日生まれ。身長/体重:178㎝/60㎏
学年:社会学部 3回生
小川勝也家長男として生まれる。
本質的には優しいのだが、その反発として、ムラが多く、喜怒哀楽を激しく表現しすぎる。その為、周りの人を困らせることが多々ある。
嫌いなものは肉類。好物は、焼き魚。
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ふるや まこと |
古屋 誠
西暦1966年 9月 6日生まれ。身長/体重:175㎝/65㎏
職業:私立探偵。古屋探偵事務所所長兼探偵長
古屋本家次男として生まれる。
それ故か、何事にもマイペースでこなしていく、喜怒哀楽がないわけではないが、怒りについては本来有する性格のためか、激怒したことは今までにない。
食べ物で好き嫌いはないが、特に好物なのは、カリカリベーコンの目玉焼きである。
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せりざわ ゆきこ |
芹沢 由紀子
西暦1970年 7月19日生まれ。身長/体重:168㎝/50㎏/スリーサイズ未定
職業:私立探偵。古屋探偵事務所事務
芹沢家長女として生まれる。
おっとりした方であるが、活発さも持っている。ごく普通の女性である。
細かいことに気が付くことが多い。
嫌いなものは納豆である。
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うめだ こういち |
梅田 公一
西暦1971年 7月 1日生まれ。身長/体重:170㎝/66㎏
職業:私立探偵。古屋探偵事務所探偵
梅田家次男として生まれる。
ありがちな次男の性格である、自分勝手さが時折顔をのぞかせる。が、新米の頃に、自分勝手な性格が前面に出たために、仕事は失敗、当時の探偵長を始め所長にまで迷惑をかけた経緯があり、その性格が出ていないか自己分析した上で行動できるように訓練をし、今では、殆どのところを制御している。
好き嫌いはないものの、やはり一番の好物は、母の手料理である。が、難点は、ビール好きであること、ビールであれば底なしのように飲む。
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ふせ |
布施
職業:町田警察署の刑事。
古屋誠との電話での遣り取りから想像するに、只の知り合いではない様子。
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細身の男
職業:探偵(らしい?)
名前、年齢は不明だが、細身の体格である。
芹沢由紀子が指名した人物であり、古屋誠に芹沢由紀子を預けたという借りがあるようだ。
また、その筋の情報通である。
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ふるやたんていじむしょ |
古屋探偵事務所
事務所は、東京都町田市忠生の外れ、多摩市に近い方にある。
事務員と探偵と探偵長の3人だけの事務所である。そう大掛かりの必要もなく、店舗使用可のマンション形式のアパートである。
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町田市
東京都の多摩南部に位置付けられている南にせり出した一体で、神奈川県に隣接した市。
作品年代においても、駅周辺はかなり発展している。
しかし、駅を離れると田園風景が広がっている。
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町田駅
町田市木曽町にある。私鉄とJRの駅。
作品年代において、駅周辺はかなり発展している。
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スタンスティック
伸縮日本刀型電撃特殊警棒である。考案・製作したのは古屋誠ではない。
電源部は、グリップ内部から下部に当たる。
グリップ部が加圧される事によって、スイッチが入るタイプを採用している。
スティック部は円筒型では、スパークを発生させる面積を取りにくいため、また、よりスパーク部分を特定させるため箱型を選択している。
このことにより、裏面では峰打ちのようなことも可能となっている。
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ひかりだま |
光玉
現代版煙玉である。考案・製作したのは古屋誠ではない。
大きさは、ピンポン玉くらいで、握りやすい大きさである。
光玉は、煙幕の代わりに強烈な閃光を発生させ、煙に巻く代わりに、光の目つぶしを相手に与えるものである。
但し、網膜を焼くのではなく、強烈なフラッシュによる一時的な麻痺を起こさせる物である。
また、本体は、閃光とは別に強力な熱により溶解させるようになっている。
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Copyright(C) 2002,2009 木眞井啓明