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Soly japanese only.
書き物の部屋のイメージ オリジナルと二次創作を揃えております。拙い文章ですがよろしく(^_^)!
no-imageのバナー 探偵と迷い


     5


 公一は、朝早くから勝彦の後に付いていた。
 その道すがらの接触者は、全てが既に確認の取れた者達ばかりである。
──所長の調査から数えて、三週目、九月二四日で、月曜日。もう、接触者は、増えないだろうな……。とは言え、所長は、細かいと言うか気にしすぎと言うか……。
 誠から、新たな接触者はいないだろうが、勝彦の素行は毎日しっかり見て、報告するように言われている。
 報告書を書くことも、素行調査も、仕事であるとは言え、嫌だと思ったことはない。
 しかし、である。
──大学学内で、聞き込みできるところは全てやったしなぁ。学生達へは、しつこくも、深くも聞けないし、これ以上は無理だよなぁ。
──ま。これも仕事だと割り切るか。所長を怒らせると、只では済まなさそうだし。……はぁ。
 聞き込むべき対象がない場所で、不審に思われず、素行調査をするのは、そうとうに骨が折れるものである。
──さてと。特に聞き込めるところもないし、大学が終わるまでに、残ってる裏取りとまとめでもするか。
 肩をすくめながら、踵を返す。
 その時、ふと道を挟んだ向かいの歩道に、佇んでいる男が目に付いた。
 サングラスをしているため視線の先は確認できないが、大学を見詰めているように見受けられた。
──……ん? ここに用でもあるのか? う〜ん。
 視線が重なったのか、その男は顔を巡らせ、駅とは反対方向へと足を向ける。
 しばしその男を追うが、不自然な動作がなかった事もあり、公一は、本厚木駅へと向かうためにバス停へと足を向ける。

     *

「良し! こい! あぁ〜」
 勝彦は、成瀬駅にほど近いパチンコ店にいた。
 講義のない木曜日のお決まりコースになっていた。
 勝彦がパチンコ店を出たのは、昼のほんの少し前。
「チェッ。今日は、これだけかよぉ。
 土曜日、保つか?」
 今のところは、次のバイトを探す気はないようだ。
 所持金とて少ないのであろうが、町田へと出て行き、駅に程近いファーストフード店へと入っていく。
──さて、今日は何処が出そうかな?
 ハンバーガーを頬張りながら、次の調達先の吟味を始める。
 一方の公一はと言えば、勝彦を見やすい席に陣取り、こちらもハンバーガーを頬張っていた。
──そう言えば、所長は、あんまりハンバーガーが好きじゃないみたいだな。上手いのになぁ。
 そんなことを思いつつも、時折、勝彦の方に視線を向ける。
 コーラを飲み、ハンバーガーを頬張りながら、接触者がないか注視する。

「ありがとうございました」
 食べ終えた勝彦は、店員の声に見送られ、次の調達先へと足を向ける。
──やれやれ、今度は何処に行くつもりだ?
 ゲームセンターか、パチンコか、と考えつつも勝彦について行く。
 しばらく、ついて歩いていると。
 脇の小道から、いきなり飛び出してきた男が、公一にぶつかる。
「うわぁ!
 ……何処見てるんだよ」
 横倒しに倒れつつ、そう吐き捨てながら公一が起き上がっている間に、ぶつかってきた男が背後に回り込んでいた。
 更にその間に、同じ脇道から数人の男が現れる。
──こ、こいつ等は……。どこかの組員か?
 公一は、何れもその筋の人物と判断する。
 巻き込まれたくはないのだが、ぶつかってきた男は、完全に公一を盾にすると決めたようである。
 背後から出ようとしない。
 気が付くと、周囲には、ぽっかりと空間が出来上がっていた。
 追っていた者達の人相に怯えているのであろうが、人の持つ好奇心を刺激すのも事実である。
 周囲が見守る中、押し問答が続いている。
「おう。そこをのいてもらおうか?」
「退くのは良いんだが……」
──だけどなぁ……。
 公一が移動すると、背後の男も同じ方向に移動する。
 公一は、その場の雰囲気で、完全に走り出すタイミングを失っていた。
 更に……。
──しまった! 見失った。くっそぉ〜。
 思い出した時には、勝彦の姿は既になかった。
 ひとまず、勝彦の向かった方向へ移動しようとする。
「早くどけ!」
 そう言いつつ、公一の移動する方向を塞ごうとする。
 どうにも埒が明かなかった。
──……たっくぅ。……攪乱させるしかないか……。
 公一は、勝彦の向かった方向に、じりじりと足を滑らせる。
──……よしよし。乗って来いよ……。
 チラチラと視線を向け、注意を向けさせ続ける事、暫し……。
──今だ!
 公一は、素早く、反対側へ走り出す。
 野次馬の人垣をかき分けてのダッシュである。
 そのダッシュに一瞬遅れて、背後に回った男も走る。
 更に、追っている男達も走り出す。
 しばらく走り続けた公一は、徐に足を止める。
──……どうした? ……何故、追ってこない?
 足音が、気配がしなくなったからである。
 振り返ると、いつの間にか、追っ手の男達はおろか、背後についていた男もいなくなっていた。

     *

 店内の棚全てに、びっしりと、隙間がないほどに整然と並べられたビデオ。
 土曜日の日中であるためか、客は少なめである。
 ビデオレンタル&セルショップ、タルトセル。
 そこに、誠がいた。
 これまでの調べで、親会社の中に、実体のある会社、無い会社がある事が判明した。
 実体がないとは言え、電話連絡は可能である。
 会社のあるとされる住所を尋ねない限り、それに気が付く事はなかった筈である。
 中には、一つの会社に、複数が同居している会社もあった。
 所謂、起業を支援する施設、企業ではない。
 同系列で、事務を統合している訳でもなく、ましてや、分社する前提で起こしている訳でもない。
 別系列の会社が、一つの場所を共有しているのである。
 これはどう考えても、一般的な会社ではなかった。
 いや、タルトセルも含め、関わりのある全ての系列が妖しくなってきていた。
──さて。今日は、店長と配送が組員である証拠を見つけなくてはな。それと、バイト達がどう関わったかだが……。
 そう。ここの親会社全てを手繰り寄せ、見せたくなかった親会社が分かったのである。
 それは、この辺り一帯を牛耳っている暴力団へと繋がっていたことである。
 バイト達に関しては、この暴力団が、むやみやたらと手を伸ばしているのであれば、少しでも関わりがあれば利用することもあるであろう。
 しかし、そう言う兆候は、バイト達には見受けられない。
──そして……。表だった活動が皆無だったこと。だから、警察の目がいっていない。裏の活動があると、情報は掴んでいるのだが……。
 ビデオを選びつつ、時折カウンターを眺めつつ、誠は思案していた。
 勝彦が、何かに巻き込まれた可能性について。

 同じ日の夕方。
 勝彦は、悦子とJR町田駅前にいた。
「悦子、済まん。金が無くて」
「何言ってるんだか。
 バイトしてないんだから、しょうがないじゃない」
「そうなんだけどな……。
 んで。また、いつもの着替えを預かってくれないか?」
「またなの? しょうがないわねぇ。はい」
「恩に着る。
 今日は、絶対勝って次のデートで、どっか行こうぜ!」
「行くのは良いけどね。
 月曜日、寝坊しないでね?」
「おう!」
縦書きで執筆しているため、漢数字を使用しておりますことご理解ください。
下記、名称をクリックすると詳細を展開します。
おがわ かつひこ
小川 勝彦
西暦1980年 9月10日生まれ。身長/体重:178㎝/60㎏
学年:社会学部 3回生

 小川勝也家長男として生まれる。
 本質的には優しいのだが、その反発として、ムラが多く、喜怒哀楽を激しく表現しすぎる。その為、周りの人を困らせることが多々ある。
 嫌いなものは肉類。好物は、焼き魚。
ささき えつこ
佐々木 悦子
西暦1980年 8月 8日生まれ。身長/体重:160㎝/45㎏/スリーサイズは未定
学年:社会学部 3回生

 佐々木玲児家次女として生まれる。
 気性の激しい、とまではいかない荒さがある反面、優しさもある。また、いわるゆ面倒見の良いところを持っている。
 嫌いなものは焼き魚関係、だが、好物は、刺身。
ふるや まこと
古屋 誠
西暦1966年 9月 6日生まれ。身長/体重:175㎝/65㎏
職業:私立探偵。古屋探偵事務所所長兼探偵長

 古屋本家次男として生まれる。
 それ故か、何事にもマイペースでこなしていく、喜怒哀楽がないわけではないが、怒りについては本来有する性格のためか、激怒したことは今までにない。
 食べ物で好き嫌いはないが、特に好物なのは、カリカリベーコンの目玉焼きである。
うめだ こういち
梅田 公一
西暦1971年 7月 1日生まれ。身長/体重:170㎝/66㎏
職業:私立探偵。古屋探偵事務所探偵

 梅田家次男として生まれる。
 ありがちな次男の性格である、自分勝手さが時折顔をのぞかせる。が、新米の頃に、自分勝手な性格が前面に出たために、仕事は失敗、当時の探偵長を始め所長にまで迷惑をかけた経緯があり、その性格が出ていないか自己分析した上で行動できるように訓練をし、今では、殆どのところを制御している。
 好き嫌いはないものの、やはり一番の好物は、母の手料理である。が、難点は、ビール好きであること、ビールであれば底なしのように飲む。
「タルトセル」 店長
職業:「タルトセル」 店長
 店長として表に出ることが多々あるため、表裏を使い分けできる人物のようである。
ビデオレンタル&セル
「タルトセル」
 所在地は、町田駅商店街の外れに位置している。
 店構えとしては、ごく普通のビデオショップと何ら変わるところはない。が、その実は、暴力団の資金源の一つとして位置づけられている。
 全店舗へのビデオ配送、在庫、回収なども兼ねており、ショップとしての機能は低めとなっている。
 また、本格的な本部は別に存在するため、ここには、それらしき人物の出入りは皆無である。
 当然、店長としても、一般人見える人物が登用されることは言うまでもない。
町田市
 東京都の多摩南部に位置付けられている南にせり出した一体で、神奈川県に隣接した市。
 作品年代においても、駅周辺はかなり発展している。
 しかし、駅を離れると田園風景が広がっている。
町田駅
 町田市木曽町にある。私鉄とJRの駅。
 作品年代において、駅周辺はかなり発展している。
成瀬駅
 町田市成瀬にある。JRの駅。
 作品年代において、住宅地の駅と言ったところ。



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