|
|
俺はある日。
小学生くらいの時に、よく遊んだ路地を久しぶりに見た。
懐かしさのあまり、ちょっと踏み込んでみた。
すると、突然目の前が真っ白になった。
目眩なんかではない、光が強すぎて白く見えた感じだ。
その刹那。
見慣れぬ街角にいた。
見慣れた路地に入ったはずが……。
「ここは、どこだ?」
呆然と、俺は独り言を口にした。
と言っても、辺りには誰もいない。
独り言を呟いて、何とか、落ち着きを取り戻した俺は、首を巡らせてみる。
薄暗い路地だったはずが、だだっ広い道なのか、いや、広場のような所にいるようだ。
しかし、広場とは言っても、土の上ではない、アスファルトでも、コンクリートでもなさそうだ。
いったいどこにいるのか、よく分からなかった。
更に気を取り直して、もう一度辺りを見回してみる。
すると、微かに、前方に何かポールのような物が見える。
先端が金色に輝いている。
とりあえず、行く宛もないので、俺は、そっちの方に向かって歩き出す。
そう思いながら、しきりにどこなのか考えている自分に気付く。
どれくらい歩いただろうか、周りの景色が代わり映えしないから、進んだ距離がつかめない。
自分の疲れから距離を測ってみる。
まだ、いつもの駅まで入っていない感じである。
更に歩いていく。
突然、俺はあることに気が付く。
ポールのような物形に変化がない。
距離が遠いと言われればそれまでなのだが、もしかしたら、歩いているつもりが一歩も進んでいないのではと言う妄想に取り憑かれる。
そこで、左足を上げ、ゆっくり一歩を踏み出す。
左足は、果たして前に出たように見える。
踏み出した場所を左足で固定して、右足を上げてゆっくりおろす。
確かに一歩進んだように見える。
まだ、妄想が消えない。
ポケットをまさぐる。
たばこを取り出す。
紙を一部切り取って、足下に置く。
こうしておけば、歩いた分だけこの紙が後ろに行く筈である。
一呼吸して、左足から踏み出す。
確かに、置いた紙が後ろに行くことが分かり、安心した。
と、悠々と、軽快に歩き出す。
どれくらい歩いたのだろうか、既に、足下に置いた紙は見えなくなった。
体の疲れ具合から、駅までの距離は越えたようだ。
ポールを目指して。
歩く。
ひたすら歩く。
歩いている内に、また、目の前が真っ白になった。
やはり目眩ではない、目の前が真っ白になった感じだ。
その刹那。
元の世界。
いや、正確に言えば路地を出たところにいた。
まさか。さっき見たポールとは……。
〜完〜
|
|
二作品がすんなり仕上がったため、欲を出した三作品目がこれ。
再び、男が主役。この辺から、交互にでもしようかと漠然と思っていた。
慕情とか、思い出から一変する話になってしまった。と言うのが本音。
これは、いつものように何も考えずに書き始めた作品である、が故に、長くなってしまった。
落ち切れてない気がするが、あえて、何であったのかを言わせなかったのだがどうであろうか?
もし、よろしければ、感想など頂けると嬉しいです。
|
|