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オリジナルと二次創作を揃えております。拙い文章ですがよろしく(^_^)!
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乙女の宇宙旅行…… |
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リーン。リーン
スィー。
「おかぁさぁん。いないのぉ?」
自室のドアを開けて、顔を出して叫ぶ。
返事が返ってこないしぃ。
何時の間に出かけたのよぉ。
ぱたぱた。
家は、4LDKのワンフロアだから、移動がめんどくさいほど広い訳ではないのだけど……。
出かけたのに、全然気が付かなかった。
声、掛けてったのかなぁ?
などと思いつつ、八畳ほどの広さのリビングの方に入る。
リーン。リーン
はいはぁい。今出ますよぉ。
誰からかな?
今、家にいるのは私だけみたいだし、両親宛ではないはず。
私は、壁のモニターを確認する。
「えっ?」
びっくりして、声を上げちゃった。
だって、宇宙局からの通話要求だったから……。
あっと、びっくりしてる場合じゃない。
自室でも受けられるけどぉ……。
う〜ん。まいっか。ここで受けちゃえ。
「通話。オン」
モニターに向かって言うと、お決まりのボディリティチェックが要求される。
ボディリティチェックって言うのは、体を使った個人を特定するチェックのことで、暗証番号みたいなもの。
で、そのチェック情報が、情報承認局に送信されて登録情報と照合される。
問題がなければ、相手側に情報が表示され通話ができる、と言うことになってるのよ。
ソファーに座ってと。
「こちらは、宇宙局特殊旅行課です」
「あ、はい。ふ、藤野樹です」
もぉ。座ったとたん、繋がるから焦っちゃったじゃない。
「申請されましたご旅行ですが、無事承認されましたので、お知らせします」
「えっ! 本当ですか。やったぁ!
あっ、すいません……」
「クスッ。
大丈夫ですよ。では、正式な手続きに移りますので、通話を切ってお待ち下さい」
「はい、ありがとうございます。
「通話。オフ」
チン
やったぁ〜。申請が通ったぁ。
嬉しくて、ソファーから立ち上がって、小躍りしちゃう。
などと喜んでると、おぉおぉ〜。
モニターに、つらつらと、文字が出てきた。
あちゃぁ〜。親の同意もいるのぉ〜。
未成年だから、しゃぁないかぁ。
いいや、後で、お父さんか、お母さんに見てもらおう。
あっ、そうだ。
みんなも通ってると良いなぁ。
ストッ。
聞いてみよう。
まずはぁ。「通話。飯野佳乃子」
再び、ボディリティチェックをする。
モニターに、接続中の文字が表示された。
今表示されてる”接続中“、ってのは、通話要求した相手が家にいるって事。
外出する時は、不在モードにしておけば、勝手に留守録になるからね。
それから、通話できるのはこっちが指定した人だけで、家族であっても出られない。
う〜、まだかなぁ。佳乃子も通ってると良いなぁ。
「樹。お待たせ……」
「やっほ〜。
佳乃子ぉ。聞いてよぉ。今さっき。宇宙局から連絡があって、申請が通ったよぉ。
佳乃子は連絡来た?」
「……」
「佳乃子? どうしたの?」
「……。え? ううん。……そっか。樹は通ったんだ。良かったね」
「えっ? じゃぁ、佳乃子は……」
「……うん。だめだった……」
「ご、ごめん」
「……ううん……。大丈夫……」
「……元気だしなよぉ」
「そ、そうだね」
「佳乃子……。じゃぁね」
「じゃぁね」
「通話。オフ」
チン。
佳乃子は通らなかったんだぁ……。
あ〜あ。ちょっと、つまんないな……。
……他のみんなはどうなったかなぁ。
後で聞いてみよう。
*
ピピー。ピピー
ん?
誰?
ピピー。ピピー
何?
ん?
ピピー。ピピー
朝?
あ!
そうだ!
バサッ。
今日は、私の一六年間で、初の宇宙旅行の日!
な、何時?
「時刻」
「六時一三分です」
あ、まだ大丈夫……。
う〜、やばやば。
トッ。
でも、ちょっと急がないと。
身支度。身支度。
ぱたぱたぱた。
私は身支度をして、リビングを通ってダイニングに入る。
「お母さん。おはよ」
「はい。おはよ。
良く起きられたわね。……でもないわね」
お母さんたら、ちらっと横目で時間見て言うしぃ〜。
「あ〜ん。まだ間に合うんだからぁ」
私は慌てながら、席について、ご飯を頬張る。
「もうちょっと早く起きれば、慌てなくて済むのにねぇ」
「ほんらこといっら……」
ぐっ。つ、つっかえた。
く、くるひぃ〜。
「ほらほら。はい、お水」
ごくごく。
あ〜。死ぬかと思った。
げっ! 時間が……。
「ごちそうさま」
ぱたぱた。
よっ。
もう私ったら、慌てまくりながら、玄関にいるの。
「忘れ物ないわね?」
「え〜と。多分、大丈夫」
荷物を持ってドアの前に立つと、ドアがスライドして開く。
「おかぁさぁん。行ってきま〜す」
「気を付けるのよぉ」
「は〜い」
勢いを付けて、家の前を横切る遊歩道を、シャトルストップまで駆けて行く。
うふふ。
う〜、初の宇宙旅行だぁ。
うれしいな〜ったら、うれしいなぁ〜。
しかも、親はなし!
もう、最高!
更に!
今日のために買った服で、おめかししちゃったもんね。
青が好きなんだけど、今日は、黄緑ほどではない明るめの緑単色を基調に、オレンジのステッチが入ったワンピース。
裾の方は、フレアっぽい感じで広がってる。ギャザーもフリルもないよ。
もう、子供じゃぁないもんね。
逆に襟は丸いから、ちょっと子供っぽかったかな?
でも、襟の縁にアクセントのレースが付いてるの。
後は、この服に合わせて、深緑を基調にしたポーチ。
それと、ポーチと色を合わせた旅行鞄。ま、中身の大方はスモールインしてあるから、女性が持つショルダーバッグより一回り大きい程度。
はっ、はっ。
この服だと。本当は走るのは控えたいんだけどねぇ。
これも、ちょっと寝坊した私がいけない。
ぐすん。
間に合わなかったら、旅行キャンセルだし。
シャトルに間に合うかなぁ?
シャトルストップが見えた、と。
時間はぁ……。え〜。大丈夫だぁ〜。
と、突然。ふっと、体が宙に浮く。
うそっ。
つまずいた?
あっ!
私は、声に出す暇もなく、目の前が真っ暗に……。
*
ん?
目が覚める、私。
え〜と。何、してたんだっけ?
とりあえず、目を開ける。
ま、まぶしい!
な、な、何?
眩しすぎて、目をぎゅっと閉じちゃったよ。
おそるおそる、目を開ける。
さっきより眩しくない。
ふぅ〜。
で。ここ、何処?
この光は……。
お日様の光より白いから、部屋の照明っぽいなぁ。
ってことは、見えているのは天井?
周りを見て……。
あ、あれ?
く、首が動かない。
えっ? 何?
どうなってるの?
手、足、感覚はあるけど、こっちも動かせない。
「だ、誰か……」
声は出せたぁ。
良かった。良かった。
「樹。気が付いたの?
もう、しょうのない子ねぇ。あれほど気を付けなさいって言ったのに……」
「お、お母さん?」
「そうよ。どうしたの?」
「こ、ここは?」
「病院よ」
「え〜っ? だって、シャトルストップに……」
「そこで、見事に転んだそうよ。
でも、どう転んだら、むち打ちに、両手足骨折なんてするのかしらねぇ」
う、うっそぉ〜。
じゃぁ、初の宇宙旅行は?
そんなのないよぉ〜。
〜完〜
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下記、名称をクリックすると詳細を展開します。
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ふじの みき |
藤野樹
16歳。
お調子者、と言ってもよいくらい明るい少女。おっちょこちょいであるが、友達思いでもある。
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いいの かのこ |
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スモールイン
嵩張る物などを、小さい物質にすること。
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話の筋は全く変えてませんが、表現や行動などを変更・追加しましたし、一人芝居に見えた部分も変えました。
以前のものよりは、読みやすくなったのではないかと思っております。
もし、よろしければ、感想など頂けると嬉しいです。
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