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Soly japanese only.
書き物の部屋のイメージ オリジナルと二次創作を揃えております。拙い文章ですがよろしく(^_^)!
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「今日は月曜日! はぁ……。今日から、また調査だぁ」
「ふふふ」
「そう。聖美はもう音を上げるのね」
「う。え、え~とぉ」
 朝のすがすがしい屋外では無く、第一講義棟の中を移動している四人であるが、ため息混じりにぼやく聖美に、少々きつい言葉と鋭い視線を以て、真意を聞き出そうとする薫であった。
「聖美ぃ。今日もがんばろう! お~!」
「お、お~」
 元気良く掛け声を出した楓に対して、これまたなんと、対照的に元気のない聖美なのであった。
「聖美ぃ。元気ないよ。どうした?」
 これまた珍しいパターンであるが、楓が聖美を気遣っているようである。
「……物理の調査って、地道すぎるよね」
「そう? 化学も地道だよ。一緒じゃん」
「……楓。それでは、全くと言っていい程、元気づけになっていなわよ」
「えっ、そう? 明子はどう思う?」
 楓が、大変なのは一緒であることを告げているようなのだが。自分の方も地道であると告げたに等しく、フォローとは言い難い事であるのを薫が指摘する。しかし、楓は薫が言うところの全てを理解しているのか怪しいところである。
「そうねぇ。地道なのは物理だけじゃない、と言うのは分かるけれど。聖美の元気を取り戻すには足りないわよね」
「そうかなぁ。そうなの、聖美」
「……あ、あんたねぇ。……いい、もういい。がんばる」
 明子から言葉が足りていない事を説明されると、とうとう聖美にも聞く始末である。聖美は結局、投げやりな状態で元気が出ないまま、実験棟に向かうことになったのである。
 実験棟で調査に入った楓達は、地道に、ひたすら地道に調査をしているのであるが……。
「うっ」
「楓、大丈夫?」
「う、うん。だ、大丈夫だよ」
 強がりなのか本当に大丈夫なのか、表情からは、かなり痛みに耐えている様子の楓である。
「余り無理しちゃだめよ。まだどれくらい続くか分からないんだから。一息入れましょ」
「大丈夫だってばぁ」
「はいはい。行くわよぉ」
 明子は、楓の襟を後ろから引っ張り、楓を引き摺るように移動を始めたのである。当然「あ、明子。く、くるひ~」と後ずさりながらも、首に食い込むブラウスを前に引っ張ろうとしているのである。
「戻るでしょ」
「も、戻らない……から。首がぁ。ごほごほ……。もう! みんなに笑われたじゃない」
 懇願する事で、ようやく解放されたようであるが、周りにはいい清涼剤になったようで、各所に笑いが零れていた。
「ごめんねぇ。でも、楓は夢中になりすぎるし」
「あっ。楓ぇ~……はぁ、はぁ。大変……だよぉ」
 休憩にでも出ていたのであろうか。楓の名を呼び、息を切らせながら走ってくる生徒がいたのである。
「おっ。なっちゃん。どった?」
「学生の外出禁止令が出たよ」
「へっ?」
「だぁかぁらぁ、外出禁止令だってばぁ」
 言葉が伝わらなかったのかと、もう一度、念を押すようにオーバーアクションを持ってして告げたのである。
「……うそ。じゃぁ、この調査はどうなるの!」
 二度目で、ようやく事の重大さに気がついたのか、あるいは理解が追いついたのか、楓は、“なっちゃん”と呼ぶ同級生の肩を掴んで揺すったのである。
「きゃぁ~ぁ~ぁ~」
「楓、そんなに揺すったら話が出来ないでしょ」
「おぉ~っと。なっちゃんごめん。つい」
「もう! 楓はぁ。じゃぁなくて、どうしよう」
「どうしようって」
「そうねぇ。ひとまずニュースでも見ましょうか。そのうち学校から指示がある筈よね」
「そうだね。じゃ休憩室にいこ。と、薫にメールっと」
 既に耳に入っているであろうが、薫にメールをしながら休憩室に向かう楓と明子であった。

     *

「……繰り返しお伝えしておりますが、日本政府は、本日現時点を以て以下を発令すると発表がありました……」
 休憩室に入ると、備え付けのテレビには既にニュースが流れていた。
「遅かったわね」
「もういるし。……あれ? 聖美は?」
「置いてきたわよ」
「え~」
「……発令された内容ですが。日本国内で学校に通う全ての学生に対して、自宅から一切の外出をしてはならない、外出禁止令が発令されました。この発令の開始は、発表のあった時刻、西暦二一二八年七月五日、一〇:〇四になりますので既に発令されております。
 これにより、日本国内の全ての学校が休校となりますが、解除期限は設けられておりません。尚、一部に例外が含まれています。例外に当たるのは、学生連絡会の依頼による調査に携わっている学生です。この学生向けには、自宅からの外出ではなく、学校から移動するに置き換わります。よって、調査に加わっている学生は、学校に止まり自宅に帰ることが許可されなくなります。学校関係者におきましては、登校済みの学生の安全を第一に親御さんとの連携をお願いします」
「とうとう大事(おおごと)になってしまったわね」
大事(おおごと)ってねぇ」
「学生の外出禁止令なのよ。大事(おおごと)と言わずして何というのかしら」
「まぁ、そうかもしれないけど……」
「学生の行方不明も未解決だし、上空にあんな物が出てくるようじゃ、国としては、安全を考えるしかないんでしょうねぇ」
「それでも、遅いとは思うのだけれど」
 楓達が暢気に発令の内容について語っていると……。「登校中の学生の皆さんに連絡します」と、チャイムすら鳴らさず、唐突に放送が始まったのである。学校側が大慌てである事が覗える。
「来たわね」
「いや、来たって。何が?」
「黙って」
「ニュースでご覧になった学生も、既におられると思いますが、学生の移動に関する発令がなされました。
 当校でも政府の指示に従って、既に登校されている学生の皆さんには、学校に止まってもらう方向で現在は考えており、学校長を始めとして協議中です。最終決定まで学校の敷地から出ないようにお願いします。尚、念のため出入り口を一時閉鎖とします」



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「う~。流石に家に帰れないから、何か体が痛い」
 楓が箸を止めて漏らしながら、背筋を伸ばしたり肩や首を捻ったりしている。コキコキと鳴りそうである。
「へぇ。楓は、お家のベッドが恋しいと」
「あんですって」
「あによぉ」
「二人共、何やってるのぉ。ご飯を食べるか喧嘩するかどっちかにしてよ」
 珍しく明子が制止に入ったのである。
「え~、だって聖美が」
「あによ。あたしの所為だって言うの」
「二人共……。もう、しょうがないわねぇ」
 制止に入ったものの、押し切れず押され気味の明子は少々困り始めたようである。
「一週間……」
「ほっ?」
「外出禁止令が出てから一週間経ったわね」
「そう言えばそうだね。……まぁ、学校でのお泊まりは、結構楽しいよね」
「……そうね。調査は大変だけれどもね」
「うっ。そ、それは、大変だけど」
 楓が引きつりながら答えていると……。
「やぁ~いやぁ~い。調査が目的なのだよ、楓君」
「う~。聖美ぃ」
 何をどう話しても、結局こうなるのが楓と聖美である。
「一番の問題は」と、明子が何を思ったのか、唐突に真顔で問題提示をする。
「一番の問題?」
「そう。一番の問題。……それは、お風呂よ!」
 明子が、女性として大事(だいじ)なところを付いてくる。確かに、今は学校にいるのだから、自宅にいる時ほど快適ではないかもしれない。
「そうだねぇ。この学校は体育会系じゃないから、シャワールームも少ないし」
「そうそう。男子と交代制だし、なんかね」
「あるだけ良しとしなさい。緊急事態なんですからね」
 楚々と食事を取りながらそう告げる薫は、相変わらず冷静である。
「まぁ。ほうなんらけろね」
「楓ぇ。食べながら喋らないでよね、もう」
 お昼を取りながら、あれやこれやと会話が弾む楓達であった。
「そう言えば昨日の夜、脱走者が出たって」
 どこから仕入れたのか、聖美が怪しさ一杯の情報を話し始めたのである。
 一週間も缶詰状態であり、若い学生にとっては息が詰まったあげく、と言えるのであろうが、その真偽について、果たしてどうなのであろうか。
「脱走とは、余り良い言葉ではないわね。それにしては、学校から注意喚起はないわね。どこからの情報かしら?」
「又聞きだからねぇ。そう言っているだけだったりするかも」
「聖美。こんな事態ですからね、情報は正確にして頂戴」
「う、うん。次からもっと詳しく聞いておく」
 結局、墓穴を掘ることになった聖美である。
 如何にして、信憑性の高い情報を入手するか、あるいは、自信で裏付けをとるかであるが、結局の所、情報量が多すぎる時代である。複数の情報を元に考える必要があると言うことのようである。
「……う~ん。そうは言ってもなぁ、今の状態だとかなり難しい気がする」
「そうねぇ。楓の言う通りかもしれないわよねぇ」
「……。それはそうと、化学の方はどうなっているのかしら?」
「どうって言われてもねぇ」
 確かに楓の言うとおり、“どう”と言われて、何を答えるべきかは悩むところである。
「そうねぇ……。今のところ巨大建造物の周囲に、未知の化学物質、原子や分子も発見できていないのよねぇ」
「そう。こちらも、どういった力学で浮いているのか解明できていないわね」
「そもそもで言えば、未知の物質を探そうとしているのに、今の地球のスキャン方法で見つかるか疑問だけどね」
「ほう」
「聖美」
 聖美がにやけると、間髪を入れずに睨む楓がいた。ちょうどそこに、「ピンポーン」と放送が入ったのである。
「お昼休みですが、学校から連絡があります」
「何かあったのかしら?」
「ニュースでは、何も言っていなかったと思うけれど」
「じゃぁ……」と、楓が何かを言おうとしたが……。
「学生連絡会から最新の情報が入りました。海外の科学系大学が調査していた、学生の行方不明事件についてです。事件当時に、周囲の波長に変調があったことが発見されました。確実性の検証も重ねられていますので、何らかしらの波長が関与している可能性があるとのことです。最終的な判断はまだ出ておりませんが、学生連絡会から情報が入りましたので皆さんにお知らせします」
 この放送が流れた後、歓声が上がったのは言うまでもない。これまで、未解決であった事件であるのだから尚更であり、この学校の生徒にも無関係とは言いきれないからでもある。
「やっと、結論が出そうなのね」
「そうね。でも、防げなければ意味はないわね」
 薫の水を差す発言に、楓と聖美が喜ぼうとするのを止めざる終えなかったのである。
「そうだけどさ、一歩前進、じゃだめなの?」
「それはそうね。もう一つも解決できればいいのだけれど……」
 薫はそう呟きながら、食堂の窓から鎮座し続ける巨大物体を見詰めていた。

     *

 歓喜に沸いた食堂を後にして木立に来ていた楓は、「るんるん」と、口ずさんでしまう程に上機嫌のようである。
――一つ解決しそうだし。こっちも何とかしないとね。
 そう思いながら緑が茂る木立の中へと入り、枯れが集中している場所まで来る。一本の木の前で立ち止まって幹に触れる。
――うっ。痛いんだね。ごめんね。今、解放してあげる。うっ、くぅ~。
 楓が心から謝罪するのを見計らったかのように、また、その触れた手からではない、何処からか来るのであろう木々の傷みを受け入れているようである。
「うわぁっ。くぅ~」
 放っておいた所為なのか元からなのか。楓が感じる痛みは激しく、相当の痛みを受け入れたようで、「もう、だめ」と呟きながら、痛みに耐えかねた楓は、ずるずると根元に座り込んでしまうのであった。
――でも、大丈夫。痛いんだけどね。楓ちゃんは耐えるよ。
 木に語りかけながらも、傍らに座り込んでいるのであった。

     *

「だめだ」
「うん。だめぇ~」
「あらま。二人共ダウンなの?」
 食堂のテーブルに突っ伏している二人。相当に疲れた顔をしているのは確かである。
 薫と明子も疲れた様子が窺える。だが、それを臆面も見せていないのは大人の対応と言える。だが、別の見方をすれば、楓と聖美の方が自然だと言ってもいいのかもしれない。
「まだ、一週間ちょっとしか経っていないのにもうなのね。あれほど先は長いといっておいたでしょうに」
「えっ? あぁ、違う違う。調査の元ネタがあれだから、結果が出ないのがだめなの」
 楓が言い訳のように喋ると「そう。それは悪かったわ。てっきり……」と薫は何故かそこで切った。故に、楓は身構えるようにして言葉を紡いだのである。
「てっきり? 何?」
「ないわよ」
「うっそだぁ~」
「それはそうと。聖美は何かないのかしら」
「えっ? え~と」
「そう。聖美の方がだめなのね。楓は、まだ音を上げていないというのに」
 思いきり煽っているのが分かる薫の言葉。果たして……。
「え~。でも、こっちだって調査詰まってるじゃん」
 意表をつく発言である。バテてはいるのであろうが、そこそこの言い分は持ち合わせていた訳で、三人の視線が集まり、「あに?」と、聖美が疑問を返しただけに止まったためか、代わりと言っていいのか、薫が口を開いたのである。
「……確かに。物理の方は、化学より厳しい調査なのは分かっているわ」
「どういう事?」
「力学などを説くには、事象を解析できないといけないのだけれど、それが困難な状態。つまり、情報が全くないに等しい状態である、と言う事よ」
「それで?」
「そうね。結論を言うと、調査と言っても仮説や推論からスタートしている状態だから、正解に辿り着けない。と言う事ね」
「そ。多分こうだろう、いや、こっちかも、だけしか出来なくて、現実的じゃないって事よ。はぁ」
 聖美はため息までつく始末で、かなりつらい状態のようである。
「なるほど」
 上体を起こして腕組みをした楓が何かを考えている。
「じゃぁ、化学の方と同じだね」
「ふ? あんでよ」
「だって、スキャン結果はあるけど、地上からの計測だから地球上の分子がうじゃうじゃ。除外するのも一苦労。ついでに言うと、スキャンだってどこまで役に立つのか疑問だし」
「疑問って、あに」
 楓が自信満々に語る内容に、聖美も興味津々である。
「そりゃぁ。あれだよ。え~と……。そうそう。原子や分子が自然に出している波長や放射線、スペクトルなんて言ったものがあるけれど、それは、あくまでも地球上で発見された物を判別するための仕組みだから、未発見の物に、どれだけ有効かは分かっていないんだよね」
「うんうん。もうちょっと分かりやすく言うと、未知の原子や分子の放出物が、現時点で分かっている方法を使って検出できなければ、発見は出来ないと言ってもいいでしょうね」
「おぉ~」
 楓の珍しい高説と明子の補足により、聖美も理解したようである。どちらも、まだ仮定や推論の上での調査と言うことになる訳で、行き詰まるのも分かろうというものである。
 “ピンポーン”突然、校内放送のチャイムが鳴ったのである。
「生徒の皆さんに連絡します。只今、学生連絡会から報告がありました。先日報告のあった波長ですが、自然界には存在しない物であることが分かりました。特定の範囲内でのみ検出されたとの情報もあります。詳しくは、報告書を所定の場所に保存しますので、各人で確認して下さい。以上です」
「おぉ」
「きたぁ~」
 楓と聖美が、学校からの放送内容で元気を取り戻したようである。
「でも、巨大建造物の方ではないのを理解しているのかしら?」
 薫が浮かれすぎないように釘を刺すのを忘れていない。
「あっ、そうだったっけか?」
「そう言えば、そうだったような」
「あははは」
 笑ってごまかす二人であった。
「本当にしょうのない子達ね。……何をニヤけているのかしら。明子」
 傍らで、ニヤニヤしている明子を視界に捉えたようで、薫としては、結果が分かっているような表情を見せつつも、確認するようである。
「だって、久し振りに二人の母親薫が見られたから、つい嬉しくて」
「はぁ。明子まで」
「いいじゃない。私の気分転換なんだから」
 そんなこんなで、楓達はひとまず実験棟に戻ることにした。だが、戻った楓と明子に待っていたモノがあった。
「ほっ?」
「えっ? 今何と」
「ですから、あなた方には、発見された波長が何から発生しているのかを調査して欲しいのです。それで、依頼情報を渡したいのですが?」
「あっ、はい。どうぞ」
「それでは、よろしく」
 研究員から情報を受け取るため、明子は自身の携帯端末を操作して受領する。情報を渡し終えた研究員はその場を離れていくのであった。
「二人だけなのかしらね」
「何か書いてない?」
「ふむ。人数は書いていないわね。ま、緊急の依頼だものね。必要なら回して貰いましょ」
「はぁ。まぁ、どっちにしても地道なんだよねぇ」



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――……二週間? 経ったねぇ。痛いのは嫌だけど……。でも、木や動物たちが元気なのはいいよね。
 実験棟から出てきた楓が、伸びをしながら思いを馳せる。
「楓が……。変だ」
「あんで楓ちゃんが変なのよ」
「そりゃぁもう。いつも以上に変!」
「だから、どこがよ!」
「え~。内緒ぉ」
 言いながら走り出す聖美であった。
「ちょっとぉ、待ちなさいよ」
 四〇度は優に超えている筈の炎天下で、良く走り回れるものである。結果……。
「だめだぁ」
「聖美が、逃げる……から」
 学生会館に入るやいなや、壁にもたれかかり座り込んでしまっており、結局こうなる二人である。しかし、これも二人のコミュニケーションなのかもしれない。
「まったくもう。こうなるのが分かっててはしゃぐからでしょぉ」
「明子。放っておいて席を取るわよ」
 すました顔で二人を置いていく薫とそれに続いて行く明子だが、席を取るために先に行くというのも友情であろうか。
「ま、待ってよぉ」
「ちょっと、楓。おいて……行かないでぇ」
 楓がすがるように歩き始めると、聖美がまけじとと言うか、やや涙声で楓の後に続く。相変わらず楓において行かれそうになると、こうなるようである。
「西暦二一二八年八月一〇日火曜日のお昼のニュースです。本日、朝からお知らせしていますように、日本中に蔓延していた植物の枯れについてです。ここ二週間ほどで、大部分の植物が元に戻っており、自然発生的に元に戻っているとの見方もあります。尚、一部では元の状態以上に萌えていると言う話もあるそうです。枯れが発生した原因についても、まだ判明していない状態ですが、その一つは、環境に何らかしらの変調などがあったのではないかと言うことです。
 次です。ペットや動物の凶暴化についてです。至る所で発生し交通にも影響を及ぼしておりましたが、一週間ほど前から減少しています。こちらも、何故凶暴化したのか、原因の特定は出来ておりません。しかし、現在はペットの殆どが元の状態に戻っており、他の動物についても同様に減少が確認されております」
「うほっ。そうだよね。学校の木立くらいしか目にしてないけど、枯れが減ったよね」
「そうよねぇ。木立の中も日差しが大分遮られるようになったし、風が吹けばそこそこ大丈夫ね」
「うんうん。ん? 楓、どった?」
「ううん。何でも。枯れがなくなってるんだね。……良かった」
 何も言わない薫は、楓を見詰めていた。だが、その視線は、楓が気付かないほどに優しいものだったようである。

     *

 お昼を終えた楓達は木立を訪れていたのである。
「おぉ。枯れている場所、探す方が難しそう」
「ホント。大分茂ってるわ。前より枝振り良くなっていない?」
「そうかなぁ。……でも、ホント。自然て凄いね」
「もしもし、楓。やっぱ変だよ」
「あ、あにが?」
「楓だよ?」
「そうだよ」
「絶対、そんなこと言わないって」
「ほっ?」
「あのさぁ、“自然てすごいね”だよ? そんな事、言うかなぁ」
「む。聖美。それは酷い。楓ちゃんだってね。そんな言葉言うときだってあるんだよ!」
「でもぉ……」
 聖美を睨み付けて猛反撃する楓に、聖美はたじたじである。
「自然とは自己修復も出来る凄い生き物よ。一ヶ月の間に枯れて戻って……。何かを伝えようとすることだってあるわよ」
「実は、聖美の方がお子様だったりして。ふふふ」
「な、何てこと言うかな。楓よりお子様? ないよ」
「むむ。あたしの方がお子様だって言うの」
「そりゃそうでしょ。どう見たって、楓よりあたしの方が大人だよ」
「そんなことないよ」
 相変わらず、何でも競争のネタに出来る二人である。これで、二〇歳になろうかと言うのだ、凄いとしか言えない。
「あらま」
「さっき、聖美が枯れている場所を探す方が大変と言ったけれど、その通りね。もしかすると、既に枯れている場所はないのかもしれないわね」
「そうだねぇ。でも、本当に何かあると思う?」
「何の事かしら」
「薫がさっき言ったじゃん、何かを伝えようとすることがあるって」
「後々になってみないと、分からないことの方が多いのだけれどね」
「うっ。くぅ~」
「楓!」
「あ、大丈夫。いやぁ、痛みは忘れた頃にやってくるからね」
「楓ぇ。本当に大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。痛みはあるけど、何でか、前みたいにならない。だから大丈夫」
 心配でしょうがない聖美に、楓なりに説明するが、楓自身も何故以前と違っているのか理解できていないようである。それでも楓は、木々が、動物が、元気であれば良しとしているようである。

~第十章 「共生」 完
縦書きで執筆しているため、漢数字を使用しておりますことご理解ください。
下記、名称をクリックすると詳細を展開します。
ふじもと かえで
藤本 楓
西暦2108年12月25日生まれ・身長/体重:165㎝/50㎏
職業:専課学校 基底学部化学科5年生

 藤本家の長女で、両親と三人暮らし。
 性格は、子供そのものと言える性格である。しかし、それは、喜怒哀楽全てを表現するためであり、20歳として知識、知能が低い訳ではない。また、人見知りもしないため、誰とでも仲良くなれる。
 食事、食べ物の好き嫌いはないが、ケーキなどの甘い物が好物。
ほんどう かおり
本藤 薫
西暦2108年12月25日生まれ。身長/体重:167㎝/50㎏
職業:専課学校 基底学部物理科5年生

 本藤家の長女で、両親と三人暮らし。
 性格は、母親のように優しく、時には厳しく、しかし、本質としては優しさを多分に持ち合わせている。楓にとっては、無くてはならない親友になっている。
 食事、食べ物の好き嫌いはないが、ケーキなどの甘い物が好物。
いわま さとみ
岩間 聖美
西暦2108年08月13日生まれ。身長/体重:170㎝/55㎏
職業:専課学校 基底学部物理科5年生

 両親、姉と四人暮らし。
 性格は、子供っぽい所もあるが、二〇歳に何とか相応しい女性だが、楓に似た所もあり、類は友を呼ぶ、を表した友人の一人。
 嫌いな食べ物は、肉だが、当然、甘い食べ物には目がない。
やまだ あきこ
山田 明子
西暦2108年06月21日生まれ。身長/体重:172㎝/58㎏
職業:専課学校 基底学部化学科5年生

 両親、姉弟と五人暮らし。
 性格は、長女であるだけに、しっかり者で、世話好き。だが、おっとりしているわけではない。その辺は、弟を持つが故なのかも知れない。
 女性としては珍しく、見た目からは創造しがたいが、どっしりした印象を受ける。薫以外の姉役、と言える。やはり、楓の危うさを見ていられないと言ったところか。
 好き嫌いはない。その中で一番の好物は、和菓子。
かんこうえつえりあ
関甲越エリア
 関東甲信越を短縮したエリアの名称。
 東西は千葉・神奈川から新潟、南北は群馬・栃木から長野・静岡の一部まであるエリア。
 地理的中心地を起点に同心円を描いて交通ルートが確立されている。
 住居表示は従来のままであるが、使用することも可能。
あつぎびーびー
厚木BB
 厚木とは、神奈川県の中央部にある地名。
 楓達が通う学校が含まれ、関甲越エリアにある企業地区の一つ。

 中小企業から大規模企業まで様々。
あつびーびーせんかがっこう
ATSUBB専課学校
 楓と薫が通う学校で、場所は、関甲越エリア、神奈川、厚木にある。
 基底学部として、化学、物理学、自然の学科を持つ専課学校。
 建物としては、講義棟が3つ、実験棟、学生会館、学校事務棟が各々1つがある。
えりあ
エリア
 道州制を拡張改定した考え方で、太平洋側から日本海側を一纏めにしている。
 道州制の場合は、どうしても東京を中心に考えがちで、周辺の過疎化を避けられない弱点があったため、新たに提唱された思想。
 大動脈を地理的中心線に置くことができ、分散にも適している。
きかがっこう
基課学校
 基礎課程を学ぶ学校を指す。
 学問の基礎はもちろんのこと、忘れがちになる人間性を育む基礎も含まれている。
 21世紀の小学校、中学校が九年一貫教育に置き換わった物と考えてよい。
せんかがっこう
専課学校
 専門課程を学ぶ学校を指す。
 21世紀の大学、専門学校が置き換わった物と考えてよい。
 尚、入学年齢は21世紀の高校と同じ。よって、高校以上と言うことになる。
いりょうしつ
医療室
 専課学校の保健室は概ねこの施設。
 専門の学問を学ぶ上で、怪我、火傷等々学部によって緊急で治療が必要になることが希にある。
 そのため、それなりの設備が整えられていることから、保健室ではなく医療室となった。
びーびー
BB
 ”BB”は、Business Blockの略語で、企業を集中させたブロックになる。
 理由は、昔からあった共同開発を増やす狙い、若者を早い段階で社会に参加させる狙い、などにより、遠くより近くが良いであろうと言うことで、この配置を採っている。
 結果、集まった企業は、概ね専課学校の学部が中心となった。
しーびー
CB
 "CB"とは"Commerce Block"の略で、商業ブロックに当たる。
 この商業ブロックには、大きく二つの役割がある。
 一つ目は、大商業施設、または、ブロック全体が大型のショッピング・センターとしての役割。
 その中には、移動拠点としての宿泊施設も併設されている。
 二つ目は、交通ルートを纏めるターミナルとしての役割。
 交通ルートには、大きく三つ。
 エリア中心地とを結ぶルート。
 近隣の企業ブロック、住宅ブロックとを結ぶルート。
 その三つを纏めたターミナルの役割を担っている。
えるびー
LB
 "LB"とは"Life Block"の略で、居住ブロックに当たる。
 マンション、アパートの減少により、住宅地が大分変貌している。
 空き住宅地と一戸建て地区をまとめ、2階屋、3階屋が、高層の集合住宅に置き換わっている。
 日本では窮屈な住宅空間であったが、空き住宅地の恩恵に預かり、ゆとりある住宅空間を実現している。
 居住エリアには、必ず緑地公園が設けられ、心地よい生活を営めるようになっている。
だい?じゅうたく(こうそうしゅうごうじゅうたく)
第?住宅(高層集合住宅)
 高層集合住宅のことをさすが、マンション、アパートとは趣が少々違っている。
 従来の一戸建てを改装に積み重ねた高層住宅となる。
 一階建てから三階建てまであるが、二世帯住宅はない。
 地名+施工番号+住宅で呼ばれることが多い。



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