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Soly japanese only.
書き物の部屋のイメージ オリジナルと二次創作を揃えております。拙い文章ですがよろしく(^_^)!
イットキマンのバナー イットキマン

     Aパート

 やぁ、みんな。
 元気にしていたかな?
 さて、今回の物語を始めよう。
 ここはアンタッテと、座部ジューバの北、離れた場所にある、マー雲テッド。
 一年中登山客で賑わう場所である。
 そこに、ぴちぴちの浅黄色の上着、その下にはレースが程よいアクセントになっているベージュのブラウス、そして、これまたぴちぴちの浅黄色のタイトスカートに身を包みんだ、一人の女性がいた。
「ちょいと、そこのお兄さぁん」
 そう語るその女性が、しなをつくって、腰より長いロングヘアーをくゆらせている。
 その顔には、まるで仮面舞踏会にでも出席しているかのような、仮面が付けられていたのである。
「これを外して、私と遊ばな〜い?」
 その女性は、若者にべったり張り付いて、言い寄っているのである。
 う〜ん、私もされてみたいものである。
 おほん。
 さて、続きをどうぞ。
 巧みな指使いで、ゆったりとリュックを外していく女性。
「貰ったよぉ〜〜〜」
 言葉と茹で蛸のような若者を残し、去っていく。

 一方その頃、同じマー雲テッドの少々離れた場所では……。
「フン!」
「わぁ〜〜〜」
「獲物だ」
「ホイ」
 ごそごそ。
「あぁ〜もう。しけていること。
 非常食しか入ってない」
 説明しよう。
 大男が、登山客を投げ飛ばしている、がしかし、投げ飛ばしているのは、人だけである。
 リュックを器用に外し、傍らにいる細い男に渡している。
「人がいなくなった」
「それじゃぁ、次行こうかなぁ。
 て、ちょっと待て。
 少しは、運ぶのを手伝え!」
 どすどすと、大男が歩き去っていく。
 その後を追って、細い男が、ボトボトとある物を落としながら、抱えて奪い去っていく。
 ある物、それは、食料である。
 一人の女性と、二人の男。
 言わずと知れたウバンダーである。
 はてさて、いったい何をしているのやら。

     *

 ウバンダーが、騒動を起こしてから一時間が経った頃……。
 説明せねばなるまい。
 強盗が発生したことにより、警察はおろか、レポーターも、マー雲テッドに集まっていたのである。
 しかし、集まりすぎ、麓は大にぎわい、いや、ごった返していた。
 更に更に、観光客ではないため、周辺の飲食店は迷惑していたのである。
 そんなごった返した状態の中、レポーターは、がんばって中継をしているのである。
「ここ、マー雲テッドで、強盗が発生しました。
 犯人は、女性一人と、二人組の男、と言うことです」
「物騒なことが起こりましたねぇ。
 怪我人は出ていますか?」
「はい。
 残念なことですが、二人組の男に被害を受けた方々に、怪我人が続出しているようです」
「そうですか。
 強盗と言うことですが、取られた物は何ですか?」
「はい。
 二人組の男についてですが、食料だけがリュックから取られているとの情報が入っています」
「食料、ですか。
 目的は何なのでしょうか?」
「はい。
 それについては、今のところ分かっておりません」
「分かりました。
 引き続き取材をお願いします」
 各放送局では、似たような内容を放送していた。
 この事件は、衝撃的に伝えられたのである。

     *

 所が変わったので、説明しておこう。
 座部ジューバのとある場所。
 居間と思しき場所で、お茶をすすりながら、ワイドショーを見ている人物がいた。
「いや〜ね〜」
 のんびりした口調で独り言を呟きながら、淡々とワイドショーを見続けいている人物。
 誰あろう、伊知地定子である。
 ここは、伊知地松太の町工場、とは言え、瓦礫すら残っていないのであるが……。
 いわゆる跡地と言った方が良いのか。
 どうやら、町の再建に手一杯で、自分の工場まで手が回っていないようである。
 それはさておき、ぽっかり空いた大穴の下、地下に鎮座しているバーブの内部である。
 そこに組み込まれたままの伊知地家であることも付け加えておこう。
 さて、定子は、徐に受話器を取って、ボタンを押す。
 ピッポポパ。
 所変わって、定子が掛けた先で、電話が鳴る。
 プ、プルル、プ、プルル。
「どうした、定子。
 何かあったか?」
 受話器を取った男。
 言わずと知れた松太である。
「あなた〜。
 テレビを点けてみて〜、また〜……。
 あら〜? 何だったかしら〜?」
「分かった、テレビを点ければ良いんだな」
「そ〜よ〜。
 プツッ」
 これまた、相変わらずの定子との遣り取りで、テレビで何かが放映されていることだけを知る。
──リモコン、リモコン。
──あ。またか……。
「タカ。悪いがテレビを点けてくれ」
 ぽりぽり。
 ごくごく。
「ぷは〜」
「おい、タカ、聞こえないのか?」
 ぽりぽり。
 ごくごく。
「ぷは〜」
「……タカ。悪かった……。
 ヒデ、すまんが、テレビを点けてくれ」
「いいっすよ」
 頼まれたヒデは、タカの席近くにあるリモコンを操作する。
 ブン。
 しかし、いつものことながら、タカは何故、松太の言うことを聞かないのか。
 松太が哀れで仕方がない。
 ほっとけ。─松太談。
 それはさておき、テレビで流されるワイドショーでは……。
「すみません。被害に遭われた方ですね?」
「はい。リュックを返してください。
 このままでは、登山ができません。
 ううぅ……」
 テレビのワイドショーでは、被害にあった登山客の悲痛な声が聞こえてくる。
「あ、すいません」
 レポーターが、移動中のストレッチャーを呼び止める。
「君。離れて、怪我人を搬送しないと」
「あの、どんな状況で……」
「はい、どいてください。ドアを閉めます」
「あ、まだ取材が……」
 バタン。
 ピーポーピーポー。
 あまりにも無体な仕打ちに、レポーターが固まったのは言うまでもない。
 とは言え、搬送途中に呼びかけるのは、いかがな物かと思うのは、ナレーターだけであろうか。
「それでは、中継場所を変えます。
 端馬田さ〜ん」
 突然だが、解説しよう。
 レポーターが失意したのを見て取ったのためか、あるいは……。
 そこはそれとして、キャスターがレポート先を切り替えたのである。
 しかし、ある意味においてレポーターが哀れである。
 ……おほん。
 では続きをどうぞ。
「はい。あっちでばたばた、こっちでばたばたしております。端馬田であります。
 こちらは、二人組の男が強盗をしたとされる現場であります。
 これ以上近付くことが出来ないのでありますが、カメラさん寄ってください。
 見えますでしょうか?
 あの山は、強盗にあったと思われる人の山であります。どのようにして造られたのか、投げ飛ばしたとするなら、レスラー級、いえ、それ以上の人物と思われるのであります」
 カメラは、その人山に対して高所車を導入して、消防やレスキュー、果ては警察官までを動員して、頂上と裾野から、積み上げられた人の救助が行われている姿を映し出していた。
 レポートしている中で、音声にバタバタと音が入っている。
「はい。カメラさん、戻してください。
 以上のような状態であります」
 カメラが再び、端馬田レポーターを映し出すも、動きが激しく、追うのが大変なようである。
「はい。端馬田さん。
 相変わらずのバタバタしたレポートありがとうございます。
 それで、怪我人はどれくらいか、情報は入っていますか?」
「はい。
 今現在で、数十人救助したとの情報がありますが、人数を数えている状態ではないようであります」
「そうですね。一番下にいる人の安否が気がかりです」
 スタジオとのやり取りの中も、人山から解放されたのだろう、怪我をしており、担架に乗せられたり、肩を借りたりして救急車に乗り、病院へと向かっていく。
 その救急車だが、さながらベルトコンベアーのように数珠繋ぎになっている。
 いわゆるピストン輸送と言い換えても良いのかもしれない。
「はい。その通りであります。
 あ、今入りました情報に寄りますと、軽傷の方が集まっているようであります。
 今から移動するであります」
 端馬田レポーターは、脱兎の如く移動をしていくのである。
 スタッフは、ついて行くの大変であるようだ。
 カメラで捕らえた映像の乱れから、その大変さが伺える。
 う〜ん。困ったものである。
「あ、こちらにいらっしゃいるようでありますね。
 すいませんであります。
 どういった状況で、怪我をされたのでありますか?」
「え? あ、大男に、いきなり投げ飛ばされまして」
「はぁ。それで」
「投げ飛ばされながら、リュックが奪われました。
 運良く気絶せずにすんだのですが、リュックはもう一人の男が物色していたように見えました。
 リュックを、いえ、中にあった食料を返して欲しいです」

 所が変わったため、説明せねばなるまい。
 ここはバーブ内部。食い入るようにTVを見ている面々、であるのだが……。
「う〜む。酷いなぁ」
「無惨ですね」
「かわいそうっす」
 松太が呻く。
 ヒロが呟く。
 ヒデが悲しむ。
 タカは……。
 ぽりぽり。
 ごくごく。
 お煎餅を食べていた。
「……これは、もしかしてもしかすると」
「多分もしかするでしょうね」
「うむ。
 バーブの出動準備だ」
 ごそごそ。
「タカ。
 何をやっている。出動準備だぞ」
「準備してます」
「それは、何だ?」
 タカが、手に持っているのは……。
「……?
 リュックに、お弁当に、お菓子」
「そう言う準備が必要なのか?」
「山と言ったら、ピクニック。
 ピクニックと言ったら、お弁当と、三〇〇円までのお菓子。
 うんうん」
「違うだろう」
 松太の言葉に返答せず、黙々とピクニックの準備を続けているのであるが、非常事態ではないのであろうか?
 タカの今後が心配である。

     *

 所が変わった為、説明しておこう。
 マー運テッドの裾野近くにある、大岩などが転がっている場所。
 その昔、噴火や地震で、斜面を転がってきたと言われているのである。
 そんな大岩群の中……。
「ウーバン様。
 調達完了ですよぉ」
「よぉ〜し。
 お前達、腹ごしらえするよ」
「イエッ」
「サー」
 またまた説明しよう。
 ウバンダー達は、戦の前の腹ごしらえの如く、先ずは、空腹を満たすことにしたのである。
 しかし、その食べっぷりは、豪快を通り越していた。
 いったい、どれほどありつけいなかったのやら。
「所で、セイビー。何で今回はお山なのかい?」
「よくぞ聞いてくれました。
 それはですねぇ、この山の頂上付近にですね、柔らかい場所があるんですよ」
「そうかい。
 じゃぁ、ご飯食べたら行くよ」
「あら〜? 今回は、それだけですか?」
「なんだい?
 また、あの長ったらし〜、説明を入れろと言うのかい?」
「いやぁ、まぁ、そうなんですけどね。
 全国のファンの皆さんの期待を裏切るのは、どうかと、思いますけど」
 それでは! ご要望にお応えして、説明……。
「要らない!
 CO2削減、時間削減だよぉ〜ん」
 と言うことで、説明を省かされてしまったのである。
「お前達!
 残りは移動しながら食べるよ」
「イエッ」
「サー」
 一つの岩が動き出した。
 いや、岩と見えたのは勘違いであった。
 動いたのは、コッツァバーンである。
 何故、誰も気が付かなかったのであろうか……。

     Bパート

 説明しよう。
 今は、移動中のバーブ。
 制御室では、沈痛な面持ちで、ヒデ、ヒロがバーブを操りマー雲テッドに急いでいた。
「う〜む」
「ピクニック! ピクニック!」
「タカ。いい加減にしないか。
 ピクニックに行くんじゃないんだぞ」
 解説せねばなるまい。
 タカは、テレビのニュースを見て、聞いているにもかかわらず、未だにピクニックに行くものと思っているようである。
 幸せ者である。
 そんな中、テレビでは、衝撃的なレポートが続いていた。
「……お伝えしております通り、先日も出現した大型車両が、マー雲テッドを登頂し続けているのであります。
 ご覧のように、大型車両が通った後は、樹木がなぎ倒され、無惨な状態であります」
「そうですね。
 警察などはどのように対処するつもりなのでしょうか?」
「はい。
 今のところ、対処方法などの情報は、入っていないのであります」
「このまま見過ごすのでしょうか?」
「はい。
 現時点では、対策を行う会議をしている模様であります」
 解説しよう。
 大型車両とは、言わずと知れたコッツァバーンである。
 スパイクの付いたタイヤである。通る場所にあるもの全てを粉砕しているのである。
 木をなぎ倒し粉砕し、山肌を削っていた。
 その光景は、まさしく! 自然破壊の何者でもない。
「う〜む」
「やはり、彼らでしたか」
「うむ。急がねばならんな。
 ヒデ。出力最大だ」
「了解っす」
「ピクニック。ピクニック」
 説明しておこう。
 レポーターの現状レポートに、沈痛な空気が漂い始めたバーブ内で、一人元気なのがタカである。
 そんなバーブだが、一路、マー雲テッドを目指す。

     *

 さてさて、説明せねばなるまい。
 あっ、という間に時間は経って……。
 最大出力が功を奏したようで、さほど時間を掛けずに、マー雲テッドに到着したようである。
「おやじさん。
 あいつ等は、もう中腹にいるようです」
「何とか食い止めなければ……。
 行くぞ!」
 後を追うことにしたバーブ。
 しかしである……。
「おやじさん。
 倒木なんかが邪魔で、思うように進めないっす。
 これじゃぁ無理っすねぇ」
「追いつけないのか……」
「このままでは、無理か……。
 よし。イットキマン出動だ!」
「おやじさん。
 順番通りだと、今回はタカですよ。どうします?」
「……タカか。
 う〜む」
「……うわぁ〜」
 解説しておこう。
 何故、松太が大声を上げたか。
 それは、限りなくタカの顔が、松太に接近していたからである。
「タ、タカ。離れんか!」
「お、おやじさん、行く!
 ヒデも行ったんだ、僕も行く」
「タカ……。
 目が燃えてるぞ、暑くはないか?」
「行く!」
「……分かった。
 タカ、行ってこい!」
「了解!」
 説明、するまでもないのだが、タカは、一ブロック下に降り、シリンダーに入る。
「スーチャク!」
 スーツが前後からタカを挟み込み、装着が完了する。
 シリンダーからでると、正面にある車に乗り込む。
「私は、ロイスです。
 登録者、タカを確認しました。指示を出して下さい」
「イットキ・ロイス。
 発進!」
 ロイスは、爆音を響かせ、バーブの前部ハッチから躍り出る。
「イットキマン。
 このマー雲テッドは、景観保護に指定されています。
 既に破壊されていますから、これ以上の破壊は出来ません」
「分かった、とすると……。
 クレーンで、釣り上げるか。
 ロイス、行くぞ!」
「了解しました。クレーンで、大型車両を釣り上げます」

 一方、コッツァバーンでは……。
「おい。
 ロイスの反応が出たぞ」
「へっ。来やがったか。目にものを見せてくれる」
「なぁに、かっこつけてるんだい?
 何でも良いから早くおしよ」
「分かりましたよぉ。
 少しくらいかっこつけても良いじゃないですか……。
 上部兵装オープン。
 ミサイル発射だ、キリーカ」
「おう」
 コッツァバーンの上部から、発射されたミサイルが、ロイスを襲う。
「回避します」
 ロイスは、旋回し、反転し、ミサイルの群れをかいくぐり、降り注ぐミサイルを打ち落とす。
 しかしそうは言っても、いくつか被弾する。
「うわっ!」
「イットキマン、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。それより、何か手はないか?」
「こちらからの攻撃は出来ません。
 何とかかいくぐって、大型車両に接近するしかありません」
「そうだよな。
 とは言え、あの発射口を何とかしないと、釣り上げても攻撃されそうだなぁ」

 その頃、コッツァバーンでは……。
「キリーカ。連射しろ。
 うははは。むはははは」
「おう!」
「セ、セイビー?」
「何ですか? ウーバン様」
「そんなに撃ちまくって、残弾は大丈夫なんだろうねぇ?」
「えぇ、まぁ。
 いわゆるぅ、一つですね……」
「物まねなんかすんじゃないよ!」
「しゅびばしぇん」
 パカッ。
「能ある豚は、鼻隠す。
 ブヒーッ」
 状況の解説をしておこう。
 ウバンダーが、痴話喧嘩……。
 もとい! 会話をしている間も、イットキ・ロイスが接近を試みているのだが、セイビーの残弾を無視した攻撃に、なすすべもなく、旋回、反転を繰り返すだけとなっていた。
 状況打破が出来ないイットキマンは……。
「バーブ。こちらイットキマン」
「松太だ。どうした?」
「おやじさん。
 援護を要請したいんだけど」
「分かった。
 考えてみよう」
 所が変わったため、説明しておこう。
 場所はバーブの制御室。
 沈痛な面持ちで、唸る三人がいた。
「援護と言ってもなぁ」
「そうっすねぇ、景観保護に指定されてるんじゃぁ、攻撃できないっすからねぇ」
「おやじさん、キューカンを出しましょう」
「おぉ、そうか。忘れていたぞ。
 ヒロ、直ぐに出すぞ」
「了解」

 またまた所が変わったため、説明しておこう。
 その前に、解説させていただこう。
 場面転換がめまぐるしようであるが、諦めず、しっかり、ついて行こう。
 さて、コッツァバーンと応戦している中腹より上の斜面では、未だに、足を止められないイットキ・ロイスがいた……。
「まだ援護は来ないか?」
「はい。ミサイルなどの攻撃は出来ないでしょう」
「だとすると……」
 キラン。
「お待たせ、かんちょ〜」
 独特な雄叫びと共に、ロイスとは別角度から現れた飛行物体。
「イットキマン。
 イットキ・キューカンが飛来しました」
「イットキ・キューカンに繋いでくれ」
「お待ちください。
 ……繋がりました」
「キューカン」
「はい」
「あの車両の前面から、威嚇してくれないか。
 ついでに、上部の発射口も壊してくれ」
「分かったかんちょ〜」
 解説しておこう。
 イットキマンから指示を受けたイットキ・キューカンは、コッツァバーンの前に回り込み、威嚇を始め、時折、くちばし攻撃を加える。
 そして、その威嚇と、くちばし攻撃を受けているコッツァバーンでは……。
「あ〜。なんだいなんだい」
「あ〜、も〜、うっとおしいですねぇ。
 キリーカ、前面のレーザーだ」
「おう」
 すばしっこいイットキ・キューカンを中々しとめられないキリーカ。
「キリーカ、何をしてるんだい。
 早いとこ、やっつけておしまいよぉ」
「わ、分かっている。
 セイビー、スピードを落としてくれ、照準が合わん」
「ったくぅ、しょうがないなぁ、もう」
「ご託は良いから、さっさとおし!」
「分かりましたよぉ」
 速度を落としつつ、イットキ・キューカンを狙うが、意外にすばしっこく、中々打ち落とせないでいたのである。
 その頃、上空への攻撃が緩んだロイスでは……。
「今なら釣り上げられます」
「行け! ロイス」
「了解」
 旋回して角度を調整し、コッツァバーンへと突っ込んでいく。
 ガキン。
「イットキマン。釣り上げ成功です」
「マー雲テッドから離れよう」
「分かりました」
 一方のコッツァバーンでは……。
「うわぁ〜」
「あわ〜」
「うぉ〜」
「なんだい?
 何が起こったんだい?」
「外部カメラで見たところ、ロイスに掴まったみたいですね」
「人事のように、言うんじゃないよ、スカポンタ〜ン」
 ゲシッ。
「しゅびばしぇ〜ん。
 反撃しますよ」
 セイビーは、操縦桿の左右を前後別々に動かした。
「セイビー?
 ここは陸地じゃないんだよ。
 何でタイヤを動かすんだい?」
 説明せねばなるまい。
 セイビーは、左右輪を反対方向に回転させ、その振動を使って自身を揺らそうと考えたのである。
 大径タイヤで重量があるからこそ、と言ったところか。
 とは言え、それほど大きな揺れが起きるとは思えないのだが。
「これはですね。
 波と同じと考えてくださいな、小さな揺れが反射し続けると、大きな波に変わっていくのですよ……」
 説明を引き継ごう。
 その増幅による揺れは、イットキ・ロイスのクレーンアームにも伝わっていく。
 その揺れは、アームとコッツァバーンの間に隙間を生み、滑りに転換される。
 それが大きくなると……。
「ちょ、ちょいとお待ちよ。それって……」
「はい。
 真っ逆さまに、落ちるんですね」
「スカポンタ〜ン」
「うわぁ〜」
 ちょうど説明が終わる頃、ものの見事にアームから外れ、麓近くに落下していくのであった。
 ど〜ん。
「かんちょ〜」
 落下直後をねらい澄ましたかのように、イットキ・キューカンのくちばし攻撃が加わる。
「かんちょ〜。
 かんちょ〜」
「ロイス。車両を後退させるように攻撃!」
「分かりました」
 コッツァバーンの足下へ、小型ミサイルの攻撃を加える。
「わぁ〜。
 セ、セイビー。何とかおしよぉ」
「いやぁ、どうでしょう」
「上部兵装、破壊された」
「またなのかい?」
「どうやら、そのようですねぇ」
 ガキン。
「こ、この音は?」
「また、掴まったようです」
「暢気に言ってるんじゃ、ないよ」
 ごいん。
「しゅびばしぇ〜ん」
 つるし上げられたコッツァバーンは、どうなるかというと……。
「ロイス、旋回して、海の方に放り投げろ」
「分かりました」
 幾度か旋回した後、アームをゆるめ、コッツァバーンを放り投げる。
「わぁ〜」
「今度こそ、帰ってやるからなぁ」
「……」
 同じ頃、バーブでは。
「終わりましたね」
「あぁ」
「タカ、やるっすねぇ」
 なんだかんだで、イットキマンの勝利に終わった。
 一時の、一時の平和と幸せ守るため。
 イットキマンは、また現れる。
 おせっかいかもしれないが、俺に任せろ、この平和!
 何れまたどこかで、イットキマンは、いつも君のそばにいる。






第四話 完
縦書きで執筆しているため、漢数字を使用しておりますことご理解ください。
下記、名称をクリックすると詳細を展開します。
いちぢ まつた
伊知地 松太
身長/体重:170㎝/70㎏
学年/職業:伊知地機械工場の社長

 仕事では、優しくも厳しい、昔気質の職人と言ったところだが、頑固一徹になりきれないところが、松太の良いところでもあり、仕事上弱みになっている。
 イットキマンで使用したスーツの設計から独自に作り上げ、更に、BABまで作ってしまう、優れた才能の持ち主。
いちぢ ていし
伊知地 定子
身長/体重:160㎝/??㎏
学年/職業:専業主婦

 全てにのんびりしており、彼女の周りではゆったりと時間が流れているかのよう。
 多分、怒ったことはない。松太は、そこに惹かれたのかも知れない。
ヒロ
身長/体重:165㎝/68㎏
学年/職業:松太の工場で働く中堅社員(30代後半)

 おとぼけな性格もあるが、仕事では常に全力投球している熱血漢。社員の中では、一番まじめ。
 自分で理解していなくても、作業してしまい、物を完成させてしまう、特技がある。
 今回のスーツと、BAB製造にもかなりの部分協力している。
ヒデ
身長/体重:165㎝/55㎏
学年/職業:松太の工場で働く中堅社員(30代前半)

 常に、言い回しが大げさで、まれに、遠回りな物言いをする男。
 仕事は正確だが、前述の性格があるため、不真面目に見えることが多々ある。損な性格である。
タカ
身長/体重:175㎝/70㎏
学年/職業:松太の工場で働く若手社員(20代後半)

 本人は、ぼける気がないのに、常にぼけをかまし、誘導尋問に弱い、かなりまじめな男。
 いわゆる、いじられキャラである。
イットキマン
 松太が作り上げたスーツを着用した、正義のヒーロー。
 一時だけ現れるヒーローであるところから、松太が、思いつきで名乗った(そう言えば、その辺書いてないですねぇ。)。
ウバンダー一味
 何でもかんでも奪い取っていくところから、付いた名前。奪うんだ〜=ウバンダー(安直すぎ?)。
ウーバン
身長/体重:165㎝/??㎏
学年/職業:三悪=ウバンダーの女ボス

 性格は、シリーズに準拠(う、手抜き)。
セイビー
身長/体重:170㎝/60㎏
学年/職業:三悪=ウバンダーのメカニック担当

 何でも作ってしまう、すばらしい才能の持ち主。だが、どこか抜けているところもある。
 当初は、違う名前を付ける筈が、語感としてぴったりだったため、コンバートされこの名前になる(いい加減)。
キリーカ
身長/体重:180㎝/75㎏
学年/職業:三悪=ウバンダーの怪力担当(?)

 その怪力を見込まれて、バンバーに雇われた。が、ここまで付き合う予定はなかったはず。
 哀れなキャラ。
ばたばた
端馬田
身長/体重:−㎝/−㎏
学年/職業:レポーター

 あるテレビ局のレポーター。
 いつもバタバタしながら、レポートをしている。
 音声にも入ってしまうほどのバタバタぶりである。
 また、語尾に、「〜であります」が口癖。
ざぶじゅーば
座舞ジューバ
 一戸建て、アパート、低層マンション等々が、乱立する、閑静な住宅街。
 その一角にある、町工場が主人公のいる場所。
アンタッテ
 一戸建て、中層ビル、オフィスビル等々が、乱立する、どちらかと言えばオフィス街。
 主人公の住む隣町。
まーうんてっど
マー雲テッド
 ほぼ通年を通して、登山客や観光客が絶えない山。
 座部ジューバ、アンタッテの北、離れた場所に位置する。
バーブ
BAB=BigAirBan
 伊知地松太が作り上げた、大型のマシンである。
 後部には、伊知地松太の家を格納しているが、屋根が飛び出ている(弱点ですね)。
 その他、前部格納庫に、イットキ・ロイスを搭載する。

●推進力:圧縮エア。●燃料::酸素+水素(燃料電池)。●全長・全高・全幅:40m・10m・7m。●武装:前面にパルス型のレーザー砲●上部に多目的ミサイル・ランチャー。
イットキ・ロイス
 伊知地松太とヒロが作り上げた、車型のマシンである。
 ほぼ全てがコンピューター制御され、搭乗者の指示に従いつつ、最適な方法を割り出して行動するようになっている。
 また、音声により、復唱から助言、話し相手までこなす。この時代で考え得る最高の優れたAIコンピューターが搭載されている(松太の中での思い込み、と言う可能性はある)。

●推進力:圧縮エア/ジェットエンジン。●燃料:酸素+水素(燃料電池)/ガソリン。●全長・全高・全幅:5.5m・1.45m・1.5m/8.2m・1.56m・6.42m。●武装:左ドア:バルカン砲●マイクロミサイル・ランチャー/フロント左右にパルス型機銃を六門。下部にはクレーン。
イットキ・キューカン
 ヒロが徹夜で仕上げた、動物型メカ。
 人が搭乗するスペースはなく、ロイスのAIコンピューターの改良型を搭載しているため、自立して行動が可能。
 但し、命令を優先して行動するように、制御がされている。

●推進力:ジェットエンジン。●燃料:ガソリン。●全長・全高・全幅:5.0m・1.0m・7.0m(概ね)。●武装:くちばし。
コッツァバーン
 セイビーが、アバランカー・セカンドをベースに作り上げた、骨盤をモチーフとした大型マシン。
 コックピットは、ほぼ中央にある。アバランカー・セカンドからの流用である。
 超大径車輪で、スパイクのついた金属製であるため、概ねどんな場所でも走れる。その為、ダンパーを多数使用している。

●推進力:高圧縮エア。ホイール一体型リニアモーター。●燃料:酸素+水素(燃料電池)。●全長:全高・全幅:4m・5m・6m。●武装:後部にエネルギー・ビーム。上部にパラボラ・レーザー。右側にミサイル・ランチャー。上部中央にハッチ、下部中央にハッチ。



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